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神崎と顔を見合わせて笑った。子犬みたいな神崎の笑い顔はやっぱりとっても癒された。周りの雑音も聞こえてこないくらい、神崎の声だけしっかり私に届く。沢山の人たちが隣を行き交っているけど、まるで気にならなかった。好きな人と話すって、こんなに特別なことだったっけ。私は心で問いかける。
「あー、七瀬は結局体育館なんだっけ」
神崎が尋ねた。
「? 結局、って?」
私が首を傾げると、神崎は一瞬困ったような顔をした。けれどもすぐに罰が悪そうに頭を掻く。
「あーほんとたまたまなんだけど。他クラスの男子が校庭誘ってるの見て」
「あ、ああそうなんだ……うん体育館だよ、美里とも約束してるし」
何となく気まずく感じながら私はそう答えた。神崎は視線を泳がせながら言う。
「校庭も楽しそうだから行ってみればいいのに」
「まあ、楽しそうだけど……私は体育館でいいの」
神崎に校庭に行くのを促されたことは、不思議と私を苛立たせた。他の男子と校庭に行けばいいって、そんな容易に言わないでほしかった。
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