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私の強い返事に彼は何も答えなかった。少しの間沈黙が流れる。私は神崎の視線から逃れるように意味もなく地面を見つめた。
「……そっか! じゃあ体育館一緒じゃん、楽しみだな!」
明るい声がしたので顔を上げる。白い歯を出して神崎が笑っていた。
「実際体育館の方が人数多いし盛り上がるよなー」
「ああ、そうだね」
「俺もタケも体育館行くんだ。七瀬、桑田と一緒だろ? 一緒に見ようよ。思い出作りに!」
「え……いいの?」
「いいのって何だよー。桑田は終わりまで彼氏と回るんだろ?」
「うん、そう」
「じゃあそれまで一緒に回ろ。そろそろタケも帰ってくるから。んで一緒に体育館に行こう!」
眩しいほどの笑顔に息ができない。
私は神崎を避けて、失礼な態度をとりまくったのに。それでも今こうして友達として話しかけてくれる。遠山くんや美里の名前を出して二人きりじゃないよって強調して、心配しなくていいよって言ってくれてる。
そんな彼の優しさが、私はずっと好きだったのに。
困ってる時話しかけてくれる気遣いが、明るくてみんなからも慕われてる神崎がずっと好きだったのに……。
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