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この思いは、一生言ってはダメなんだ。
「……うん、わかったそうしよう」
「よし決まり! てかタケ遅いなーどこまで買いに行ってんだよ」
キョロキョロと辺りを見渡す神崎を見上げた。泣いてしまいそうになるのを堪えて、私は微笑んで見せる。
私が泣く番じゃない。
「神崎。…………ありがとう」
私のお礼に、彼は驚いたようにこちらを見た。ばちっと目が合う。彼の目は戸惑ってるような、緊張しているような、不思議な色をしていた。
「……なな」
「待たせたーーっつか売り切れがひどいわどこも。まあもうすぐ閉店だもんなー」
突然明るい声が響いた。神崎の友達の遠山武志くんだった。野球部で神崎とよく一緒にいるのを見かける。神崎は彼をいつもタケ、と呼んでいた。私はそんなに話したことはないのだが、坊主頭で明るく、彼も目立つ存在だった。
「お、タケ。七瀬もあと少し一緒に回ろって」
「え? お前らいつのまに……」
「あとちょっとで片付けに行かなきゃだからな。さーどこ行くか」
神崎は一人でそう喋ると、すぐにスタスタと歩いて行った。ポカンとしてる遠山くんに、私は小声で言う。
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