613人が本棚に入れています
本棚に追加
腕を組みながら遠山くんが言った。私はまたしても何も返事ができなかった。神崎の性格を知ってればモテるのは当然だし、知り合いが多いのも納得のことだ。
ようやく写真を撮り終えて別れていった先輩を見送り、神崎が振り返る。申し訳なさそうにこちらに駆け寄ってきた。
「ごめん待たせてた? 行こっか!」
「おーなに見る? あんま並んでないとこがいいな」
「だなー七瀬はなんか見たいのある?」
話しかけてきた神崎に、無理矢理笑顔を作って送った。さっきの先輩のことが聞きたくてしょうがないのに、何とかその気持ちを押し殺した。
私がここで妬く資格はない。
それでも——いつか神崎が彼女とかを作ってしまうのを見届ける日が来るんだ、と想像するだけで、私の心はぐちゃぐちゃに潰れてしまいそうだった。
次々出し物が閉店していく時刻になった。賑やかだった装飾が外されていく。盛り上がっていた学校内は一気に寂しく見えてきた。祭りの後のなんとかって言うけれど、今まさにそんな状況だ。
自分たちの持ち場へ戻り名残惜しさを感じながら、簡単な片付けだけを行った。本格的な処理はまた明日行う予定なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!