【 ぐっ、ぴっ、ぱっ♪ 】

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【 ぐっ、ぴっ、ぱっ♪ 】

 いつも夜遅くまで、コトさんとメッセージを交わした。  どちらが先にメッセージを終わるなんていうことはできない。  それは、ふたりの性格によるものだ。  だから、いつしか私たちには、メッセージのやり取りを終わらせ、おやすみをするルールができた。  それが、おやすみ前のジャンケン。  『おやすみ、ぐっ、ぴっ、ぱっ♪』だ。  ジャンケンに負けた方が、先に「おやすみ」を言う。  ジャンケンに勝った方は、後に「おやすみ」を言う権利が与えられる。  つまり、ジャンケンに勝てば、最後の言葉を添えて終わることができるという、ふたりだけのルール。  だから、今日もジャンケンをして、おやすみの順番を決める。 『いくよ! せーの! ジャンケン、ポン!』  時計の針を見て、丁度、秒針が一番上の『12』の位置で、ジャンケンを送り合う。 『パー(私)』 『チョキ(彼)』 『あっ! ちょっとずるい! 遅出ししたでしょーっ!』 『ははは……、バレたか……』 『遅出しは、負けだよ』 『分かった、僕の負けでいいよ』  そんなお茶目な部分も見せてくれる、かわいいコトさん。 『それじゃあ、おやすみ』 『うん、おやすみ。いつもありがとう。また、明日ね♪』  そんなコトさんに、私は惹かれて行ったんだ……。
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