エピソード2

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「おはよう。市川」 教室に入ってすぐ、声をかけてくれるのはもちろん綾瀬。 朝から眩しいほど爽やかで、綾瀬ってわりと俺のなりたい理想系なんだよなと思う。 「おー、おはよ」 そう挨拶を返す。 どうでも良いけど朝の挨拶って気持ち良いよな。 「今日、数学あったっけ?」 そう綾瀬が聞いてくる。 つい最近知ったことなんだけど、綾瀬は数学がめちゃくちゃ苦手らしい。 それを聞いたとき、完璧って無いんだなとしみじみ思った。 「あったと思うけど」 「だよね。最初の方で躓いてるから分からなすぎて眠くなってくる」 確かに、一回躓くとその後の授業分からないし理解に時間かかるよな。 ちょっと親近感。 「憂鬱だ」 さっきの眩しさは影を潜めて、しおれている綾瀬が目に入る。 しょんぼりしすぎてなんか可哀想になってくるな。 数学か、もしかしたらこれはもっと仲良くなるチャンスかも知れないな。 ――よし。 「綾瀬、俺が勉強教えようか?」 俺の突然の提案に呆然としている綾瀬。 数学は得意な方だしある程度は俺でも教えられるかな、と思ったんだけど、 ……選択ミスった? 「教えてなんて言ってないのに、いきなり何言ってんだこいつ」みたいな? なんか急に恥ずかしくなってきた。 柄じゃないこと言うんじゃなかったと後悔する。 俺なんかに教えてもらう必要なんてないよな、と自己嫌悪に陥っているとーー 「ほんとに!?市川が良いならお願いしたい!」 皆さん、綾瀬は紛うことなき良い子です。
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