エピソード1

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満開の桜並木を歩きながら、これからの出来事に思いを馳せる。 4月といえば、出会いと別れの季節。 そう言えば聞こえがいいものだが、俺はこの季節が好きじゃない。 慣れ親しんだ場所を離れ、新しい環境に身を置かなければならないというのは、人付き合いが得な方ではない俺にとっては苦痛だったのだ。 緊張と不安が入り混じってどうにかなりそうだった。 出来ることならば、今すぐにでもこの場から逃げ出したいくらい。 何を隠そうこの俺市川涼(いちかわりょう)は、入学式が、いや新学期が大嫌いなのだ。 幼稚園の入園式当日、新しい生活への期待を背負って一歩を踏み出した途端に滑ってコケたあの日から俺の不運は続いてる。 痛みと恥ずかしさで泣いているであろうあの日の俺に言いたい。 これから先、新学期にいい思い出なんてねぇからな!って。 今すぐにでも家に引きこもりたい所だが、今日の俺は今までとは違う。 今朝、憂鬱な気持ちで支度をしていた時に俺は気づいてしまったのだ。 不運は、暗い気持ちに吸い寄せられるものなのだと。 振り返ってみれば不運の始まりのあの日だって、どこかでネガティブなことを考えていた気がする。 上手く喋れないかもとか、友達できないかもとか。 つまりだ、今日一日自信を持って行動すれば不運が吸い寄せられることなんて無いはずだ! 多分。 実際、家を出てから学校に着くまで、不幸なことなんて一つも無かった。 「なんか良い感じじゃね?」 この調子で行けば、今までで一番と言っても過言じゃないようなスタートを切ることが出来そうな気がする。 そんなことを考えながら、スキップでもしそうな勢いで学校へと向かった。
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