エピソード2

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凝視し過ぎたせいだろうか、瞼がゆっくりと持ち上がる。 大きな瞳が俺を捉えた途端、訝しげに細められる。 そして、だんだんと眉間の皺が深くなっていく。 まずい、と直感的にそう思った。 だが、その心配とは裏腹に、眉間の皺は姿を消し、端正な眉が八の字を描いていく。 「……誰だ?」 待って、入学式で魔王の如き登場をした生徒会長であってます? 視界に捉えるやいなや「誰だ貴様!」的な感じで、烈火の如く怒り出すかと思ったのに、お手本のような困り顔を見せてくれた会長さん。 意外と、穏やかな人なんだろうか。 てか、ここってもしかして立入禁止? 何であれ、このままだと埒が明かない。 とりあえず謝るか。 「えっと、1年の市川涼です。庭園にワクワクして思わず入ってきちゃいました。すみません」 あ、やっべなんか正直に言い過ぎた気が。 やっぱりいらない正直さだったようで、会長からはぁ、と溜息が聞こえる。 「ここは、立入禁止だ。入口に書いてあっただろ?」 マジか、気付かなかった。 「見てなかったです。すみません」 立入禁止に気づかないとか俺、ヤバいな。 てかそれよりーー 「なんだ?」 「会長、赤ちゃんみたいで可愛いですね。」 「……は?」
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