エピソード3

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━━テスト当日。 1週間しっかり勉強してきたとはいえやはり心配だ。 綾瀬は大丈夫かなあ。 心配しながらも、テストに向かう。 考えても仕方がない。 それよりも、まずは俺がいい点を取らなくては。 そうじゃないと、心配してくれた綾瀬に示しがつかないだろう。 「市川」 テストの全日程が終わり、寮に戻ろうとすると声をかけられた。 「綾瀬か。テストどうだった?」 「おかげさまで平均は取れてそうだよ。ありがとう」 そう言う綾瀬は得意げな表情で、こいつもこんな表情するんだなってなんだか面白かった。 「良かった、一安心だな」 そう言って帰ろうとすると「えっ、ちょっと待って」と止められた。 「?」 どうしたのかと問いかけると、視線を彷徨わせながら口を開く。 「あのさ、俺、一週間後に試合があるんだよね」 「試合?」 「うん、部活の」 「へえ、頑張ってな」 「うん。ってそうじゃなくて!」 「?」 「……もしよかったらなんだけど、見に来ない?」 「え、」 「あっいや、空いてないとかなら別に━━」 「いやいや、行くに決まってるだろ」 あっ、ヤバい。 めちゃくちゃ食い気味に答えてしまった。 もしかして引かれた?なんていう俺の心配をよそに、どこか安心したような「良かった」という声が聞こえる。 引かれてはなさそうで良かった。 それにしても、友達の試合を見に行くなんて、初めてだから楽しみだ。
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