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「きっと嘘だよ」  芹菜(せりな)はそう言って、割れた貝殻を海に投げた。  ぽちゃん、  と聞こえるはずの音は、波に飲まれてしまったみたい。  貝殻は、静かに、静かに海へ帰っていった。  私は、さっき拾ったボトルメールを指先で持ったまま。 「その紙、普通にノートの切れ端でしょ? 『巨大シャチ、しゅつぼつ中! 海に近づくとおそわれます。みんな逃げて』なんてさ……やっぱり嘘だよ、こんなボトルメール」 「そうかなぁ」 「そうだよ」  夕日を映す海面が、黄金に輝いている。  ボトルメールをかざすと、ボヤけた海が中を満たした。  このまま放っておいたら、手紙が溶けてしまいそうで 「んー……でも、拾っちゃったから」  私はボトルメールをハンカチに包んで、そっとカバンにしまった。
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