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「私、巨大シャチ撮りたいんだよ。とりたい」 「うん。……カメラは?」 「家だよ。ここに持ってきちゃったら、私が襲われたときにカメラも壊れちゃうでしょ? だからカメラは、窓際の棚でお留守番なの」  (から)の貝殻の写真立て。  私はまだ見せてもらっていないけど、カメラの横にシン――と並んでいる光景が目に浮かんだ。  ……寂しいな。  芹菜は器用だから、きっと、写真立てのレベルも高い。  陽の当たる居間の壁――金色の短冊がついている大きな魚拓の隣に、芹菜の撮った写真が飾られているところを想像する。  ――うん、素敵。  隣を見ると、芹菜と目が合って微笑まれた。 「どんなことも、可能性ってゼロじゃないでしょ? それが嬉しいときもあるけど、苦しいときもあるんだよ」 「うん」
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