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「お前、家出してきただろう?俺正式に実家に今年は帰れないって言ったの数時間前だぞ。なのに今お前がここにいるのはおかしいだろう?」
何となく話のながれで「あ~そうか。」と思っていたがよく考えると
片道数時間もかかる所から流石のこいつでもわざわざ来ない。
「家出って聞こえが悪いな・・夏なのに楽しそうに仕事ばかりしているアイツが悪いんだよ。今は、女将だっているんだ二人の時間より仕事だぞおかしいだろう?」
こういう所が昔から変わらずだ。
「奥さんが仕事してる時に貴方は何をしているの?」
飲み物を取りに来たのか彼女が鬼塚に鋭い一言を投げた。
「あんたが事実婚の強情な彼女か。初めまして鬼塚 幸太郎だ。俺は、幼馴染とその彼女がいつまでも籍を入れないでいる事の理由を
聞きにきたんだ。」
「私達の事はどうでもいいわ。さっきから聞いていたら何様なの?奥さんが若女将で仕事している時に貴方は何をしてるの?」
やばい・・俺は思った。
水と油のような二人でしかもさっきから鬼塚が言ってる事は留美が一番嫌う事だ。
「お前には関係ないだろう?」
女に意見される事を嫌う鬼塚は、イライラした声で答えたが留美も負けてはいなかった。
「そう、関係ないわね。貴方には私達の事も関係ないわ。」
「俊介!お前こんな女でいいのかよ!ありえないぞ。」
俺は、鬼塚を無視して彼女に「仕事は大丈夫なのか?」と聞くと彼女は笑顔で後少しで終わる所と言った。
「幸太郎!お前の価値観は俺は否定しないよ。でも俺達の価値観にも口を出すなよ。俺は彼女と一緒にいて充実してるんだ。こんな女?こんな女他にはいないよ俺が一生どんな事をしても一緒にいたいと思った女だよ。」
子供の頃から一緒に育った友達で親同士も仲がいい。
一緒に育ったからと言って同じ価値観を共有できるわけじゃない。
「貴方が言いたい事は解ったわ。彼が私を選んでくれた私が彼を選んだ今の生活に彼が不満があるなら私達二人で話し合うわ。」
「そうだ、俺達は二人で決めたんだ。」
お前が口を出す事じゃないと俊介が言い切った。
昔から慎重な性格で回りの空気を読む俊介は彼女と一緒にいる為に自分の価値観を修正したのか。
微妙な空気が流れる三人。
ピンポーンとチャイムが鳴ると青い顔をしてオロオロしだす鬼塚。
玄関のカメラ前に立つ女性を見て俺は鬼塚の狼狽ぶりに納得した。
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