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「俊介!うちの若旦那いる?」
「いるよ。開ける。」
オロオロしていた鬼塚が次は、バタバタと隠れる場所を探し出すが留美が「私が出るから彼を座らせて。」静かに言った。
彼女が言う時は彼女がフル回転で頭の中で何かを思いついた時だ。
「おい!俊介。おまえ裏切るのか?」
「諦めろ!」
お前が悪いとしか言えない!鬼塚の嫁は、若女将として旅館を女将から預かり立派に切り盛りしている女性だ。
仕事に対する真摯な態度やプライドは、留美と共通するから二人は同じ価値観を持っていると思う。
「留美さん申し訳なかったわね。うちの馬鹿旦那・・若旦那がおしかけちゃって。」
「いえいえ。お持ち帰りください。」
「そうするわ~。」
馬鹿という言葉に反応した鬼塚が「自分の旦那を馬鹿とは何事だ。」と女二人に怒鳴るように言うと。
「馬鹿に馬鹿って言ってなにが悪い!こんな忙しい時に逃げ出してお義父さん達がどんなに大変か!情けない。」
不機嫌な鬼塚に冷たい目を向けてキツイ言葉を浴びせかける若女将はブラウンの髪に瞳は青く・・そう彼女は日本人ではなく元旅行者
だったイギリス人だ。
「あらごめんなさい。鬼塚マーガレットと言います。留美さんですよね会いたかったの。」
「こちらこそ、ご挨拶が遅れました。相田留美といいます。」
「俊介のパートナーよね。」
マーガレットは、留美をハグすると留美もハグで答える。
「俺の時と違うじゃないか!」
不満げな顔をして唇を尖らせる鬼塚。
「どうせ余計な事を言ったんでしょ?」
マーガレットは、眉間に皺を寄せながら自分の旦那に詰め寄る。
「余計な事じゃない。俺は俊介に男のプライドを取り戻して欲しかったんだ。」
「男のプライド」の解釈が男性上位社会という鬼塚。
「私は、自分が好きで若女将として貴方を立てるのが仕事だし好きでやってる事だけど俊介は、留美とお互いが話し合って好きにやってる事を他人がとやかく言う事じゃないでしょ?」
馬鹿じゃないの?という自分の妻の横で黙って聞いていた留美が
「鬼塚さん。私は、仕事が好きで仕事中心で生きていますしそれは、今後も変わりません。貴方の妻である彼女も同じで私から言わせたら男だというなら仕事を放棄して拗ねてこんな所にいるのが考えられない。」
マーガレットも同意見だとよく言ってくれたと留美に抱きつく。
「俺より仕事だぞ・・俺は何なんだよ。」
俊介は、昔から男の子一人で甘やかされて育った幼馴染に呆れるしかない。
「あのな鬼塚!どんだけお前子供なんだよ!お前の所の旅館が最近評判がいいのは彼女のおかげじゃないか。なにも知らない所から頑張って女将の仕事を覚えてさ、若旦那のお前を支えている彼女だろう?お前は若女将である彼女を支えろよ。」
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