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小柄で可愛い子が自宅で待っていたのにと言いながら笑顔で一条社長を見上げれば彼は彼女に微笑み返す。
「ああ、紹介するよ。妻の沙羅だ。」
「初めまして沙羅と言いますいつも主人がお世話になっています。」
そう彼女が挨拶をする間も一条社長は妻と言う彼女の側にピッタリとつき離れない。
彼女の為に椅子を引くのも何時もの事なのか慣れたように彼女は座る。
お互いに自己紹介をして沙羅は目をキラキラさせながら直哉が書いた図面を見ながら直哉に質問をしているようだった。
「直哉さん凄いですね・・お客様の動線もですけれど厨房の動線まで完璧なんて。」
「かなりこれでも修正してやっとなのよ。」
「ここはタイルってテラコッタ?」
「そうそう、そのつもりなの。」
桃花は、沙羅を不思議な人だな~と思いながら見ていた。
直哉が普通に話ている、余所行きの話し方ではなく本来の直哉の話し方。
「沙羅さんって人たらし?」
ついそう口から出てしまった桃花に服部が「ええ、そういう所ありますよ。」と笑いながら答えた。
食事が始まり桃花は、沙羅の食べ方に感心したのは自分より若いはずの彼女が綺麗な姿勢で食べる事だった。
それに色が白く色素の薄い瞳にブラウンの髪で日本人離れした感じもする沙羅は、一条社長とよく見ればお似合いだったし一条社長は彼女が可愛くて仕方ないという空気しかない。
「服部、二人を送ってやれ。」
「はい。」
食事が終わり一条社長がそう言うと行きましょうと服部は二人を自分が運転してきた車に乗せる。
「服部さんすいません。」
「いえいえ、社長は今日は車ですから。」
そう言いながらククっと服部は笑いながら、最近忙しくてすれ違いの二人の一条社長が痺れを切らして早く二人きりになりたくて自分で運転する事が多くなったと言う。
「最近奥様が御学友と共同で課題をするとかで遅かったんですよ。だから少し拗ねているんです。」
「ああ、共同課題なのね。」
「すごい過保護?」
桃花がそう言うと服部は「ええ、過保護ですね。」と笑いながら答えた。
「婚活パーティーの協力は私が窓口でなんでも伺います。」
「助かります。場所を決めるのも一苦労ですし。」
桃花がそう言うと服部は穏やかに笑いながらハンドルを握る。
「私は設計の仕事の詰めがあるから桃花は服部さんと連絡しあってすすめてね。もう一条社長の注文はこれだけじゃないから。」
「すいません。社長は仕事に関しては妥協がないので。」
「だから成功しているのね。」
「ええ。そうですね。」
婚活パーティーの場所に今後困らないと思うだけで桃花は、ホッとしたのと穏やかな服部との会話は緊張せずに済むのもありがたかった。
直哉は、もう一軒の店の内装の図面を考える必要があるらしく帰宅してすぐに書斎に入っていった。
桃花と直哉が同じマンションに住んでいる事を知って最初は、驚いていた服部だったが直哉が乙女で二人が親友だと説明すると服部は
「素敵な関係ですね。」といって笑う。
服部もまた偏見をもたない人種で彼の友人にも「乙女な男子」がいるらしく親友同士がルームシェアはいいですね~と言っただけだった。
桃花は、偏見を持たない服部に親近感を覚えたがこの頃はその程度だった。
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