天然とお調子者と胃薬

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天然とお調子者と胃薬

 でもまだ大丈夫よ。ウチの吹奏楽部には、ファゴット奏者は私を含めて3人いるんだから。後輩達が数ヶ月後には急成長して—— 「じゃあ、アタシと一緒に吹くのは、ファゴットが部長で、フルートが副部長ってことですよね? なんかアタシ、一気に出世した気分なんですけど!」  このおバカ、また調子に乗って! 「ちょっと夏子。まだオーディションもしてないんだから、他のパートは誰が吹くかなんてわからない——」 「いいんじゃないですか?」  あれ? 目の前にいるド天然さんが何か言ったみたいだけど…… 「パート内での実力は、ファゴットでは部長の鷹峯(たかがみね)さん、フルートでは副部長の白鷺(しらさぎ)さんが、頭一つ抜けています。これは他のみなさんも認めるところでしょうから」  ……ヤバイ 「相田さんは1年ということもあるので、少し早いですが、3人でソリパートの練習を始めてもいいでしょう」 「先生、ありがとうございます! 部長、副部長、これからご指導、よろしくお願いします! みんなで聴衆に感動を届けましょうね!」  やめて…… なんでアンタはこんな時だけ礼儀正しいの? 普段はもっとおバカなことばっかり言ってるくせに!  聴衆に感動を届ける前に、誰か私に胃薬を届けてくれないかしら。  もうすでに、緊張して胃が痛いんですけど……
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