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いつもの流れ
「コントはそれぐらいでいいかしら? それじゃあ、今日の議題についてなんだけど——」
二人の天然をサラリとかわす私。この二人にいちいち反応していると、会議が進まないのよね。
今日の議題は、来たるべき全日本吹奏楽コンクールで演奏する自由曲について。どんな曲を演奏したいか、意見を出し合うのだ。
もちろん、最終的に曲を決めるのは顧問の先生だ。しかし、今年から新しく顧問になった弦井先生は、みんなの意見も聞いてみたいとおっしゃったため、今日こうして会議を開くことになったのだ。
「みんなが活躍出来る曲がいいな」
と、誉が発言する。
「じゃあ、『ハラグローネの醜演』なんてどうかしら。あの曲なら各楽器に難易度の差があまりないと思うけど」
こう言ったのは、フルート(木管楽器)パートリーダー兼副部長の白鷺クロエ。なんでもおじいさんがヨーロッパの人らしい。
「ちょっと…… その曲って楽器のバランスはいいかも知れないけど、確かフルートのソロパートがあったわよね? アンタ、単に自分がソロを吹きたいだけじゃないの?」
文句をつけたのは、トロンボーン(金管楽器)パートリーダー。
そう、クロエはカワイイ顔して、実は腹黒いのだ。
更にトロンボーンパートリーダーの発言は続き——
「ウチの部で一番実力があるのは涼なんだから、やっぱりトランペットのソロが目立つ曲じゃないとダメだよ」
「ちょっと! それじゃあまるで、クロエが実力で劣ってるみたいじゃない」
反論するのはクラリネット(木管楽器)パートリーダー。
ああ、またいつものパターンよ。なんとなく金管楽器のパートリーダー達はトランペットの涼を推すし、木管楽器のパートリーダー達は、どことなくフルートのクロエの味方なのよね。
「喧嘩はやめよう! 今日はそういう集まりじゃないだろ?」
双方の言い争いを止める誉。ちなみに、誉は空手の有段者だったりする。
あーあ。ホント、毎回メンドくさいのよ、このやり取り。
だいたい私には、どうしてソロパートを吹きたいのかわからないのよね。
責任重大でしょ? 失敗したら目立つことこの上ないじゃない?
私は絶対にお断りだわ。ソロパートを吹くなんて、考えただけで胃が痛くなりそうよ。
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