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ヤバイ! マズイ!
「誰がソロとか、そういうの、ボクは興味ないな。そういうことで喧嘩になるんなら、いっそのこと、オーボエのソロが目立つ曲にしたらどうだい?」
男前の涼がまた面倒くさいことを言い出した……
去年の3年生が引退してから約半年間、ウチの部にはオーボエの担当者がいなかった。今年、待望のオーボエ経験者が入部したのはいいんだけど…… なんというか、その1年生はちょっとおバカなのだ。名前を相田夏子と言う。自分がバカなことに誇りを持つ、これまた面倒な人物なのだ。
「夏子に吹かせるのか。いいんじゃないか」
と、誉も同意する。
夏子はなぜかこの天然2人に可愛がられている。そのため人は彼女のことをこう呼ぶ。『天然に愛されしおバカ』と。
おバカと天然は相性がいいのだろうか?
誉が更に続ける。
「じゃあ、『オーバッカーノの祝宴』なんてどうだ? あの曲ならオーボエとフルートのソリがあって、後半にトランペットのソロもあるから、喧嘩も丸く収まるんじゃないか?」
コントラバス(弦楽器)担当の、誉らしい意見だ。
「まあ、それなら……」
クロエも納得したような顔してるけど…… ちょっと待って。
ちなみにソリとは、ソロパートを少人数で演奏するようなものなんだけど……
『オーバッカーノの祝宴』って、確かオーボエとフルート2人だけのソリがあるだけじゃなくて、オーボエとファゴット2人のソリもあったんじゃ……
ヤバイ!
この曲だとファゴットの私までソリパートを吹くことになるじゃない!
なによそれ、なんで私が巻き添えをくらわなきゃいけないの!
2人だけで吹くって、緊張感がほとんどソロと変わらないんですけど?
マズイ、これは絶対に阻止せねばならない!
でもどうしよう? 部長の私が『自分が目立ちたくないからやめよう』なんて言えないし……
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