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吹奏楽部の天然ズ
私の名前は鷹峯愛美。吹奏楽部に所属している高校3年生。
担当楽器はファゴット、と言っても知ってる人は少ないかも知れない。ちょっと悲しい。
それから一応、部長などという、たいそうな役職をさせてもらっている。
私は今、音楽室のイスに着席し、他の部員たちの到着を待っている。これからパートリーダー会議を行う予定になっているのだ。
パートリーダー会議とは、各楽器ごと(一部例外あり)の演奏者集団を代表する人物達が集まって部の活動方針について話し合う、いわば我が校吹奏楽部の最高幹部会議なのだ。ちなみに、今年のパートリーダーは全員女性である。
数分後。参加者が全員揃ったようだ。
「では会議を始めよう」
そう口を開いたのは、トランペット(金管楽器)パートリーダー清風涼。どこかの歌劇団の男役かと思うほど、美人でカッコいい。それにトランペットの演奏技術は高校生のレベルを遥かに超えている。
「おいおい、涼が司会をしてどうするんだ」
ツッコミが入った。
司会は部長である私がやることになってるんだよね……
そう、涼は天然なのだ。芸術家肌の天然って感じかな。
ツッコミを入れたのは、低音パートリーダー剛堂誉。コントラバス担当。
「まったく涼ときたら…… それじゃあ、改めて会議を始めるぞ!」
力強く発言し、これまた司会を務めようとする誉……
「なんで誉が司会をするんだい? ボクには理解できないんだが?」
発言まで男前の涼が、今度はツッコミを入れ返す。
「あっ、しまった……」
おわかりの通り、誉も天然なのだ。こちらは人情に厚い天然だ。天然にもいろんなタイプがあることを、私はこの高校に入学して初めて知ったのだった。
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