1章

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「俺の授業では喘息だろうが診断書だそうが、担任のサインがあろうが関係ねえ! お前も走ってもらうぞ! この軟弱モンが!」 「ほら、おめえら走れ! 罰だ」  中学を卒業したばかりの女子生徒達が体育教師に逆らえるはずもなく、体育館の中を走り始めた。  午前中で三回、午後で三回。これで四回目だから、半日だけで七回位走っている。  真凜と千夏は横に並んで走る。  なんとか頑張るからと千夏が小声で真凜に言う。  自分のせいでクラス全員どころか喘息を持っている千夏に走らせることに罪悪感しかない。  それと同時に、連帯責任で罰する田丸に腹立たしさを感じるだけだ。 「たるんでるわよー! しっかり走りなさーい!」  体育館の入り口からのんびりした口調で追い打ちをかける女性――藤ノ宮女子高校校長だ。  集団行動の練習というのに、校長はかっちりとしたグレーのスーツ姿だ。  一体何しに来たかよくわからない人だ。
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