1章

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 湖が窓に反射してよく見える。  水面がカーテンのよう。  これが夜になれば月に反射してますますエモいのだろう。  ……なんてロマンチックなことを考えてるのが虚しい。  ネットで出会い、気になる人と食事のお誘いをした。  待ち合わせの場所はここだ。  この日のためにシャレオツなレストランはないか必死にリサーチした。  人気があまりなく、静かな場所。  ――相手の人が来なくなった!  十五分、三十分経ってもなかなか来ないなーとやきもきしていたら、スマホの通知に『突然ですが今日用事が入ったので、またの機会でお願いします』の文面。  はいきた! ドタキャンですか!  呆れと悲嘆が同時にやってくる。  レストランを予約してキャンセルするのも心苦しいので、一人で食べることにした。  白ワイン片手に前菜のカルパッチョを一瞥(いちべつ)する。  「二名なのに、うわーこいつ一人でこんなとこに来てるー。断られたのかなー」と今頃厨房で話題になっているだろう。
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