1章

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 他人の会話が気になる性分だ。  会話に耳をダンボにしつつ、カバンの中からスマホを取り出し、録音アプリを開く。 「喘息かなんだかしらねーけど、たかが生徒一人亡くなっただけで騒ぎすぎなんだよ。せっかくの飯が不味くなる。なぁ、倫子(みちこ)、保健室の先生探すフリして逃げたのは正解だったな」 「そうね。責任がここにきたら困るから、警備員とあの生徒二人に押し付けましょ。適当に理由つけて、学校に来れない形にすればいいのよ。あの警備員、学園長派だから追い払うのに丁度良かったわ」  女性は無邪気な子どものように微笑みながら、水が入ってるグラスに一口つけた。 「だいたい、志村(しむら)だっけ? ガキの癖に俺に刃向かうなんておかしいんじゃねーの。学校で騒ぎ過ぎなんだよ。今どきの奴は根性ねーなー。俺、くたばった奴の両親に怒られたくないんだけど」  男性は水をがぶ飲みして、勢いよくグラスを置く。  女性は少し品のある雰囲気。
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