1章

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 体育館の隅で見学をしていた神原千夏(かんばらちなつ)も走るように言われる。  千夏は激しい運動を禁止されている。喘息を持っているからだ。 「せ、先生、神原さんは喘息持っているから……と真凜が田丸に言う。 「担任の先生に話してますし、許可のハンコも……田丸先生最初に分かったって言ったじゃないですか!」  千夏は生徒手帳と小さく折りたたまれている診断書のコピーを田丸に見せる。  生徒手帳には喘息で激しい運動を禁止されていること、かかりつけ医の診断書コピーを提出する、喘息の発作が出た時のために吸入薬を常備している旨を保護者の字で書かれている。  担任の佐田のハンコもある。  体育開始の時にこれらを見せたら「分かった」と田丸は承諾した。 「俺に意見するなんか生意気な。お前ら足蹴りするぞ!」  田丸は千夏が見せた生徒手帳を投げ捨て、診断書のコピーを勢いよく破った。
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