§ 10***奪われた時間。

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 すべてはラファエルとメレディスを遠ざけ、如いては自分たちデボネ家がこの屋敷から出て社交界に出るためだったというのに!  ただ唯一の肉親で味方であるはずだったエミリアとジョーンに限ってはすっかり体力と気力を失い、反論することもできない。況してや彼女はヘルミナが仕向けたとはいえ、ジョーンはラファエルの馬に馬酔木を与えた。刑事訴訟を起こされれば彼女に勝ち目はなく、不利な状況に立たされる。デボネ家はブラフマン家に大きな借りをつくったどころか、刃向かうことが許されなくなった。 「あ、あの。ミスターブラフマン。娘はどうなりますか?」  エミリアは身を縮こませ、恐る恐る震えながらモーリスに尋ねた。 「我が息子を危険に晒したことは許されないことだ。だが、息子が選んだ運命の女性の身内である君を責めてしまえば今日という喜ぶべき日が悲劇へ変わる。今後、危害を加えないと言うのであれば今回だけは水に流そう。二人ともそれで良いか?」 「ラファエルが良いと言うのなら」 「はい、構いません」  尋ねるモーリスにメレディスとラファエルは頷いた。エミリアはジョーンと共に泣きながら感謝し、何度も頭を下げた。 「さて、息子の結婚式の準備をしなければね、ドレスの用意に会場の飾り付け、それから食事はどうしようかしら。ああ、ラフマに手伝って貰わなきゃ。忙しくなるわね!」  レニアは喜々とした声を上げ、屋敷へと戻っていく。  祝福に満たされた空間の中、ヘルミナだけは深く目を閉ざし、この先にある暗い未来を否定した。  ――メレディス。彼女はきっと男性に見向きもされない不器量な自分を嘲笑っているに違いない。そうして彼と一緒にさせないよう企んでいるのだ。 《奪われた時間・完》
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