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深い木立から太陽の光が私を照らす。明滅する太陽光に私は少し、目がくらんだ。その刹那、私は道の右側に数件の家が立ち並んでいる場所に到達した。
2軒の家は比較的新しい。恐らく、古い家を取り壊して新しく建てたのに違いない。だが残りの3軒は古い木造家屋だった。
私は春の心地よい風を肌に浴びながら、それらの家屋の前を過ぎ去った。少し坂道が険しくなってきたところで、私は右前方に巨大な屋敷を見た。屋敷――それは奇妙なほどに大きな家だった。
屋敷の西南に立って見上げてみた。屋敷の前から道の幅が広くなっているのが判る。私は歩を緩めることなく歩き続けた。
歴史を感じさせる土塀がどこまでも続いている。塀の内側には松や杉の大木が天に延びている。そのさらに向こう側に二階建ての木造の住居が見える。恐らく敷地内にはいくつかの建物があるのだろう。複数の瓦屋根が太陽光を反射していた。
しばらく歩くとやがて屋敷の通用門があった。正門は恐らく屋敷の反対側にあるのだろう。黒い鉄製の格子があり、柱には「宍倉」という苗字があった。私は茫洋と鉄の格子を眺め、さらに歩を進めた。
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