鬼面襲来 3

7/8
569人が本棚に入れています
本棚に追加
/320ページ
「があああぁぁぁぁぁぁぁ!」  野獣さながらの雄叫びをあげた鬼面が左近の部屋から室外へ飛び出した。そのとき、ドタドタとけたたましい足音とともに数人が左近の部屋へと走ってくるのがわかった。 「尾藤さん、どうしました!?」  ひとりの警官が叫んだ。 「鬼面だ! 鬼面が出たんだ!」  矢尾板は声の限りにそう叫んだ。それと同時にようやく全身の筋肉を稼働させ、彼は鬼面の追跡を開始した。 「なに、鬼面が!」  警官たち、そして澤田とおぼしき男たちが矢尾板に続いた。 「あがあぁぁぁ、あがあぁぁぁぁぁぁ!」  鬼面は猛スピードで廊下の先を進む。鬼面は廊下を左に曲がり、その先にある戸口へと逃げた。 「待て!」  矢尾板も全力で駆けた。しかし、暗くて廊下の先がよく見えない。 「があぁぁぁ!」  ドン! 鬼面が戸口を勢いよく開く音が聞こえた。 「まずい、鬼面が屋敷の外に出てしまう」  しかし、いまだ冷静とはいえない矢尾板は暗闇の恐怖に一瞬、追跡の速度を緩めてしまった。焦った矢尾板は少しずつ追跡の速度を上げたが、戸口にたどり着いてさらに焦ってしまった。戸口から飛び出そうにもそこには履物がなかった。 「くそっ」  矢尾板は構わず靴を履かず、外へ出た。 「鬼面、どこだ!」  彼は中庭を見渡した。しかし、真夜中の宍倉屋敷には光源は皆無だった。 「勝手口だ!」  いつの間にか、澤田も屋敷の外に出ていた。屋敷内を知り尽くしている澤田のことだ、彼は鬼面と矢尾板が飛び出した戸口とは違う出口からいち早く戸外に出たようだ。 「待ちやがれ!」
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!