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その最たる理由は私が学生時代に書き上げた長編小説にあった。小説を書き始めた最初のきっかけについてはほとんど記憶にない。むしろそれは極めて無意識的で自然な生理現象のようなものだった。
私はまるで憑かれたかのようにPCに文字を打ち込み始めた。理由は分からないが、ほとんどなにも考えていないのに湯水のごとくストーリーが浮かんできた。私はそれを愚直に受け止め、指を動かす神経に情報を伝えただけだった。
私はたったの二週間でその作品『不透明な巡礼』をかき上げた。渾身の18万文字、私は処女作のできにひとまず満足した。
東翔社という老舗出版社が主催する「黄昏ミステリ新人賞」に私は作品を送った。『不透明な巡礼』は山深い崩壊寸前のひとつの村を舞台としていた。それはホラー要素の強いミステリーだった。物語のラストには奇抜などんでん返しがあったが、それすらもなにも意図せずに思いついた。
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