純白は漆黒の影なれば

灰色の町 1

　私は不調のどん底であえいでいた。ただでさえアルバイトの収入のみに頼る生活は不安定で心配だ。そして私の唯一の武器である創作力は萎(な)え、気力も減退している。私は袋小路に迷い込んでいた。

　押しつぶされそうな精神状態の中、私はひとつの動画チャンネルの存在を知った。ダ・ヴィンチ・ガーデンと呼ばれるそれは、創作者NULLが個人運営しているYouTubeチャンネルだった。

　NULLは才能豊かな詩人にして、文筆家であり、さらに歌手(シンガー)でもあった。彼のアートはどれも高水準であり、私は一発でNULLの虜となった。NULLはその奇抜な創作哲学を動画で紹介していた。奇妙に変性された金属的な声で語る彼はまるで近未来から到来した賢者(マーリン)のごときだった。

　私はNULLのTwitterアカウントを知り、それをフォローすると同時に、勇気を出して彼にメッセージを送ってもみた。

　ほどなく返ってきた返事に私は歓喜した。NULLは私のことをもっと知りたいと書いてよこした。卓越した哲学者NULLは、じつに寛容な男だった。私は喜びのままに彼とメッセージを交わし始めた。