ぼくから、未完成のきみたちへ

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おうちに帰ると、ぼくは必ずジュエレンロボたちを確認する。 ジュエホワイトが乗るかっこいいメカ、ダイアモンドボディはパパとママからぼくへのお誕生日プレゼント。 ジュエブルーのサファイアレフトレッグは、じいじとばあばからのプレゼント。 ジュエレッドのルビーライトレッグは、ジュエレンジャーコーンフレークをたくさん食べて、シールを集めて抽選で当たった。 あの時はびっくりしたなぁ。 そしてジュエグリーンのエメラルドレフトハンドは、サンタさんが持ってきた。 かちゃ、かちゃ、かちゃかちゃ、ぱちん。 しゃきーん。 すごいでしょ。 合体すると巨大ロボの超合体ジュエルカイザーになるんだよ。 どんなに追い込まれても負けないんだ。 最後は必ずジュエルカイザーが悪を倒す。 うん、だいじょうぶ。 壊れた様子もなく、全部そろってる。 いや、違う。 全部そろってはいないんだ。 ジュエイエローのトパーズライトハンドはまだ持ってない。 お誕生日でもクリスマスでもないからおもちゃはだめって、パパとママは言う。 ジュエレンジャーコーンフレークをたくさん食べても、あれからなにも当たらない。 でもこのままじゃ次のお誕生日まで超合体ジュエルカイザーになれないってことじゃないか。そんなのあんまりだ。 だからぼくはパパとママに特別ルールをお願いした。 次のスイミングのテストに合格すること、毎日ひとつお手伝いをすること、その両方の条件をクリアしたら、トパーズライトハンドをご褒美で買ってくれるって。 ぼく、がんばるからさ。もう少しの辛抱だよ。 「はやとー!おねがいしまぁす」 ママが呼んでる。 待っててね、未完成のジュエルカイザー。 お手伝いが終わったら一緒に遊ぼう。 ひき肉をこねこねするのは、ねんど遊びに似てるからぼくは好き。 お鍋の中に入れると、沈んでいたのがプカプカ浮いてきて、ピンクだったのが白に変わる。 不思議だな。 ぽとん、ぽとん。ぽとん。 きっとこのお肉もスープや野菜と超合体してるんだ。 「はやとありがとう。あとはママがやっておくから、お風呂のスイッチを入れたら遊んでていいわよ」 「でもまだたくさんあるよ?ママたいへんじゃない?」 「だいじょうぶよ。ママは超高速でやっちゃうんだから」 「じゃぁ、あそんでくる」 お待たせ、ジュエレンロボたち。 敵の地層怪人ゲギアのビニール人形をならべて、ぼくのロボ4体が次々に必殺技をくり出す。 ダイアモンドビーム! サファイアブリーズ! エメラルドクロー! ルビーファイアー! とどめをさしてやる!いくぞ超合体ジュエルカイザー!…未完成だけど。 どうだ怪人たちめ、もう二度と悪いことをするんじゃないぞ! きゅるるるる。ぼくのおなかが鳴った。 「はやとー、ごはんできたよー」 「はーい」 ぼくはもう行くね。 ごはんを食べて、おふろに入って、ママと絵本を読みながら眠るんだ。 君たちもちゃんと寝るんだよ。 おやすみ、未完成のジュエルカイザー。あしたまた遊ぼうね。 コンソメスープのお肉は、ぼくよりママが作ったやつがおいしいのはなんでだろう。 ちょっと甘くて、いいにおいがするし、色もぽかぽかしておいしそう。 不思議だな。 ぼくはその夜、パパが間違えてエメラルドレフトハンドをもう一つ買ってきちゃって、ママに怒られている夢を見た。 違うよパパ、トパーズライトハンドだからね。忘れないでね。
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