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やっと人の顔を見たかと思えば、断るや直ぐにそっぽを向く。
「最近溜息多くない?そんなに溜息ばかりついてると幸せ逃げるよ」
「あはは」
あははじゃないよ、と頭をはたかれる。
「梅子はあたしのこと嫌い?」
首を横に振るとチャームポイントのポニーテールが揺れる。
「うん、知ってた」
突っ込むことを諦めた河村は今すぐお茶買ってこい、とがま口財布を頬に押し付ける。それでも動く気配のない一青の頭に財布を乗せる。バランスは取れず、ウルフカットの柔らかな髪の毛が滑り台になる。それが面白かったのか、何度も滑らされるがま口財布。
「今すぐご飯を買ってきなさい。これ以上痩せたらみすぼらしい」
微動した。やっと動く気になったかと思えば、顔にかかっていた自分の髪の毛をむしゃむしゃと食べている。
とうとう痺れを切らし、持参している水筒を一青の後頭部限り限りに勢いよく置く。
驚きが隠せず、上半身を起こして左耳を抑える。
「耳が、耳がキーンて・・・・・・・・・・・・・・・」
い、行ってきます、と無言の圧に負けたようだ。
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