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集合場所の西出口を見ると、彼は既に待ち合わせ場所におり、慌てた明美は待たせてしまったかもしれない、と思い、小走りで向かった。
「お待たせしました。おつかれさまです」
「おつかれさまです」
いつも見えている額が見えていない。スーツ姿でもない。意外にも、だぼっとした私服と前髪のある三里の姿に心中興奮する。
よくわからない彼女の反応に少し困ったような顔をした。
「えっと、真鍋さん」
髪を耳にかけたり、前髪を直したり、落ち着かない様子の明美に思わず話しかける。
「今日は、誘ってくれてありがとうございます。それで、その、任せてほしいって言われたから楽しみにしてたんですけど・・・どこ、行きますか」
しっかりお礼をいい、身長に合わせて首を傾げてくれる三里の仕草に思わず口元を両手で隠す。
失礼なお話ではあるが、本当に三十路手前の同い歳なのかと疑いをかけているのだ。
「行きたいところありますか?」
質問を質問で返される。三里は考える。今日は、デートに誘われたとばかり思っていたが、もしかしたら励ますために誘ってくれたのか、と。もしそうだとしたら、先日はとても失礼なことを言ってしまったと後悔していた。
「あれ、三里さん?聞いてます?」
眉間に皺を寄せ悩んでいる表情をしているけれど、別のことを考えているようにも見える姿に首を傾げている。
そして、なんでもなかったように突然目を合わせてくる三里にドキリとした。
だが、しかし結果的に2人は、とりあえず歩き始めるところから始まった。
平日で、お昼時ということもあるのか、なかなか人とすれ違わない。路地裏というわけでもない。ちゃんとした大通りを歩いている。
「人通り少ないですね」
「そうですね、平日はお仕事の人が多いんじゃないかな、たぶん」
飲食店のガラス窓から見てみるが、それほどお客さんは多くなかった。
「じゃあ、あそこのお店にしましょう?新作のパンケーキ今日からってかいてありますし!」
三里は疑っていた。三十路手前の同僚が甘いものへの笑顔が出会った頃と変わらずきらきらと輝いて見えていることに。
今日は、一段と輝いて見えているらしい。
螺旋階段をあがり、言われるがまま白を基調とした店舗へ入店し、案内された席に座る。二人席の四角形のテーブルには網状のランチョンマットが2枚敷かれている。明美のひとつ空けた横側にも観葉植物もあった。
お洒落に疎い三里には、これが精一杯の情報だ。
注文してから数十分後に料理がでてきた。
メニューの写真通り、パンケーキは分厚く、ハチミツには艶がある。バターの香りが鼻腔をくすぐる。
「どうですか?美味しそうじゃありませんか?」
珈琲とBLTサンドを頼んだ三里にパンケーキを見せびらす。
パクリと一口。外はカリカリ、中はもちもち。そして、じゅわりと舌の上で溶けるチョコレートアイスを堪能する。
三里は、彼女の美味しそうに食べている姿を見る。その見られている自覚があった明美は勘違いをする。
「あとで頼みますか三里さん。おいしいですよ」
「うん、ありがとう」
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