ㅇエスカレーターは上へ、下へ

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明美達の仲睦まじい会話に店員がクスリと笑う。(はた)から見ればデートに見える。三里(みさと)の深読みがなければ、これは正真正銘のデートである。 それから三里達は映画館へ足を運んだ。チケットをもぎって、シアターへ向かう途中に、ふと思うのだ。先程、あんなにも美味しそうにパンケーキを食べていたにも関わらず、ポップコーンを片手に持っている、と。 「よく食べるんだね」 明美(あけみ)は頷いた。 「甘いものはいくらでも入ってしまうんです。三里さんも食べますか?キャラメル味ですけど」 「ううん、遠慮しとく」 チケットに記された座席に位置着く頃には、上映まで残り5分。あたりは薄暗くなり、予告が流れていた。 黙々と時間は流れ、あっという間とはいかないが、上映開始。禁止事項や注意事項は定番だ。約2時間と少しの(あいだ)。ポップコーンを取ろうとして手と手が重なる、なんてことはない。 涙を流しながら観ている三里と明美は、別れや喧嘩に滅法(めっぽう)弱いらしい。感情移入が止まらない。 エンディングまでしっかり観賞(かんしょう)し、満足気にシアターを出る。 「めちゃめちゃ感動しました。想像の上を行きましたね」 「分かります。俺、結構喧嘩とか苦手で、仲直りの仕方とか分からないの共感しましたね。それに、あんな破天荒な恋愛できないです」 「同感です」 2人は似たような価値観を持っているようで、ロビーにあるチラシを手に取り、ヒロインがどうたら、あそこはなんたら、と感想を言い合う。 「夕飯どうします?食べなければこのまま解散しようと思ってるんですけど」 「俺も、母に夕飯のこと伝えてないのでこのまま帰ろうと思います」 そして、会話通り解散した。明美はこの足で服を見に。三里は帰路へ。 すれ違う2人の行末(ゆくすえ)を期待して。 Fin.
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