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迎えの前にとめどもなく去来する
夜の 噎せる 薫りで、
さ迷う棺から目覚めれば、
霊魂になるって
なーんて事ないのねぇ。
ほら、三人の子供達が、昔話しているじゃないの。
わたしは1週間ほったらかし。
ほんと
待ちくたびれましたよぉ。
だから、
頑張って 蓋を開けようと思ったら、すり抜けちゃって、
自分の方が 驚いたわねぇ。
こんな感じなんだぁ。
あらぁ
ちゃーんと 選んどいた 写真。
使ってんじゃない。偉い偉い。
独りになるとね、
いざという写真。
常から
選んで置くようになるのは、
どういう人の『性』なのかしら?
不思議だけど、
けっこく普通なんだって。
エンディングノートがてら?
息子二人共、
最近のわたし顔なんてもう、
わかんないでしょ?だから
二人が、
出て行った頃の写真、
選んでおきました。
感謝なさい。
帰ってこない事も、
養子反対した事も、
放っといた事も、、
全部、許してあげましょ。
いくつなるでも、子供って、
親は思うのねぇ。
それこそ子供が60になってもよ。
かわいいんだわ。
あー、
心筋梗塞だって。
適当な自分と、普通の自分が
バランス、
分からなくなってたかもねぇ。
新しい家、
何も 想い出がないと、
思い入れなくて、ダメだわね。
新しい家に
お父様が一回でも
来てくれたらねぇ。
お棺の中の顔。
こーんな顔だったかしら?
わたし。
自分て、一番わからない。
それも、いいけどねぇ。
あのままだと、
どうなるかと思ったわ。
どろどろになる?の?
ま! お父様のお葬式で、
着た喪服!
わたしが自分でオーダーした
やつよぉ。
懐かしいわぁ。
良く着た喪服は、
この後、作ったやつだから、
久しぶりだわ。
度胸あるわね。姪っ子は。
わたしの喪服で、わたしの告別式
出るなんて。ふふ。
やだ、
エンディングドレス、
忘れてたわぁ。
覚えている、お父様のお葬式。
自分が出した お式で1番の
お葬式よねぇ。あれは。
昔の業界さんも、
飲食さん に職がえしてからの
弔問のお客さんも 多くて、
色々変更したの。
けど お父様を、送り出せて
胸張れると思ったわぁ。
案外自分も、早かったけど。
やだ、町内会副会長さんより、
早いなんてねぇ。
このお椀!通夜おうどん?
食べたねぇ?。偉い、偉い。
本当に上京したまんまの子供に、
こっちならでわの
式の出し方とかわかる?
無理よねどだい。
やーねぇ、
そんなに 寒いかしらねぇ。
こっちは、暗いから、三人の顔、よく見えるわぁ……。
意外だけど、自分の式だと、
そんなに拘りないのね。
母になると、
こんなもんかもしれませんねぇ。
あれだわねぇ。
三人って、つくづく、
お父様を三で割ったような
子供達だわ…。
この姪っ娘は、
この肌の白だもん、きっと覚醒
遺伝よぉ。
息子二人は、
お父様から1番近い孫だし。
どうしようもない、
血の濃さかしらねぇ。
自分も そう思うわぁ。
だって、そうでしょ?
臓器に記憶があるかもしれない、なら、血にも、意識、あるでしょうよ?
三人を見てると、
お父様に似た筋を産めたなら、
女の生も 良かったのかもねぇと
思うわ。
ついでに、あの姪っ娘も、
子供にしたかったけど。
どうして、だったかなあ?
ああ、そうか。
でも もう、いいの。
本当は ずっと、
男に生まれたかった。
不思議だわぁ。血の意識かしら?
男として、
お父様の様になりたかったし。
お父様の横に居たかった
のかもしれないしねぇ。
まあ、友達には、ファザコンって呼ばれたけど、
そんな 緩い 想いじゃないわね。
妹に、
男を 取っ替え引っ替えって
いわれたけどね、
当たり前でしょ?
お父様みたいな男性どれだけ
探していたか!
だから? 旦那様が亡くなって、
お父様もいないし、
少し、詰まらなくなった
かもねぇ。
あんまり眩しい光を見ていた
から。
昔のお父様の事、
大お婆様が生きてらした時、
聞いてたのよぉ。
ちゃんと、跡継ぎに伝えるための話わね、奥の仕切りの使命。
どうも 無駄になるのかしら?
ねぇ
お父様は 子供から見ても、
素敵な人。
お母様が一目惚れで、
押し掛けるの分かる。
人を惹き付けるのね。
お母様は、
外からお嫁で苦労したけど。
生まれて決まる、
婚約を越えての位置でしょ?
代償ね。ふふ
だいたい、洋菓子職人が、
一流老舗企業の本社食堂コック兼、相談役に請われるって、
えぐいわぁ。
あはは。
そうそう、よく お父様、
見たくて 嫁いでも食堂に
手伝いも行ったのよ!
そしたら、
『イケオジ大叔父』も、
ベストに蝶ネクタイ姿で
鍋を回していて、
お父様の シェフ姿と相まって、
社員食堂の厨房は、
もう人がね、凄いの。
あれね、
『元、日勤別家頭』は違うわ。
インテリお父様とイケオジの
制服萌えコラボが
へんに耽美で、
脳内インフレ!羨望の光景だったわぁ。なーんてねぇ。
さておき。ね。
物流の長を引退した、
お父様は 曾て、戦前サロンだったビルで戦後にはケーキを焼いて、
当時珍しい スイーツのケータリングを始めるのよ。
その後、
請われて企業の社員食堂のコック兼相談役。
時代のモーレツサラリーマンの
胃と知識を満たした
半生だったわ。
そういうわけで、弔問のお客様多かったのよね。
黎明期の西企業は、
ほとんど知り合いなんだもの。
社食に住む、オバケ よ。ふふ。
可笑しいわ。現実は、ドラマね。
お父様の考えは今でも計れない。
わたしの手伝いだって、
厨房での 算段があった
みたいだし。
早さが問われる商人は、
人の動きの先読みもするって
『元右腕の大叔父様』が
教えてくれたもんよ。
色々皮肉だわ。
これから先、
そんなお父様の事を知ってる人
もいないのなら、
此処でわたしが子供達に
知らせるのが良いんだろうけど。今出たら、
怖がるわよねぇ。
あはは、まあ!そしたら
三人楽めるかしら。
仲良くお通夜の寝ずの番。
偉い、偉い。
ガンジガラメかしら。
お父様への、深淵な愛。
ちゃんとね。
落ちるところへ、落ちますね。
夜が明けるかしらねぇ。
太陽の匂いが
立ち込め始めるのねぇ。
なら、また 夜が明けるまで
休みますよぉ。ええ。
次は 男かしらがいいかしらね?
性別とか年齢層とか 関係ないわ。
ただ、次も お父様に、会いたい。
出来れば、お父様に迎えに
来て欲しいなあ。
そして、また同じ時を生きたい。
稀代の 長。どんな形でもね。
そんな人と 走れるならね。
そんなもんでしょ?
孤独死で1週間放置の終わりでも
それなら
きっと、救われる。
神さま
常しえに
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