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夏の夕立は私たちの距離を近付けた。
傘を持って来なかった私に「一緒に帰ろう」と夏樹君が下駄箱で声をかけてくれた。
夏樹君と相合い傘で帰る事が出来るなんて、今朝の星占い乙女座が一位というのは当たっていた。
「今年も文化祭中止だし、花火大会も無いんだよね。」
このご時世で私たちは学校のイベントも全て無くなって、夏休みに好きな人を誘う口実すら無くなってしまった。
夏樹君に会えない夏休みはひどく辛い。
「じゃあさ、テスト終わったら俺が一昨年撮った花火大会の動画一緒に観る?」
夏樹君がとろけるような甘い笑顔で言った。
「本物の花火大会じゃないからショボイかもしれないけど…。」
「ぜ、全然ショボくなんかないよ。観たいです!一緒に観たい!」
夏休みに夏樹君に会えるなんて私は何だか夢をみているようで、ちょっとだけ自分の太腿を抓って現実かどうかを確認した。
「じゃあ決定で!あ、雨上がったね。」
優しく微笑む夏樹くんは雨上がりの夕日に照らされて何だか眩しいくらいにオレンジ色で、私の想いが今にも溢れ出そうになって苦しい。
「な、夏樹君。話したい事があって…花火大会の日にしようと思ったんだけど今言っていい?」
「じゃあ俺も話したい事がある」
夏樹君がオレンジ色を背負って来て私の目の前に立った。「せーので一緒に言ってみる?」
「は、はい!」
「「せーの」」
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