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「俺たちは雨に濡れたりしていないから、体の中にハリガネムシはいない」
「そうですね、確かに雨に濡れていなければ偶然体内に入れる事はできませんね。ただ……、食べ物や飲み物からなら入れられますがね」
そう言って、空になったアイスコーヒーの入っていたコップに目線を移した。
「まさか」
「はい、早朝のうちにアイスコーヒーの中に入れさせて頂いています。今回は特別にすでにシストを解いた状態で用意しておきましたので、今夜にも繁殖に移ると思います」
「汚いぞ」
「まあまあ、そう腹を立てずに。だからここに薬を持ってきています。警察を辞めて私達と一緒に、この実験のお手伝いをお願いできませんか?」
「か、家族の安全も保証されるのか」
「はい、それはご安心下さい。私どもも研究者の方は優遇しております」
赤城は項垂れながら涙を流している。
「さて、今の話を聞いて塩浦刑事のお考えは変わりましたか」
「そのかわいいハリガネムシで世界を乗っ取ろうとでも思っているのか」
「いえいえ、そんな大それた事は考えていませんよ」
「じゃあ、何を」
「間引きです。人類の公平な間引き。人類は増えすぎてしまった。日本の経済は破綻寸前です。それに、自然を破壊し、他の生物達を無視して自分達だけが楽に暮らせるようにしていった。もはや、増えすぎてしまった人類は自然に地球に害をなす存在に成り下がってしまった。だから、調和の取れた数に戻すために間引きが必要なんですよ。特に水死体ならば水生の生物の餌ともなり、自然環境には良い影響を及ぼすでしょう。かなり、考えられていると思いませんか?」
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