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「また、水死体ですか」
「ああ、そうみたいだな」
コンビを組んでいる木崎が引きつった表情で、当たり前の事を確認してきた。
「そんな気持ち悪さを全面に出しているような表情をするなよ。仏さんに失礼だろう」
「いやいや、塩浦さん。今回のも相当やば目ですよ。シャコかカニあたりにほとんど食べられちゃってるじゃないですか」
「ああ、あいつらは死肉を食べるからな。まあ、その御陰で海中は綺麗に保たれているんだぜ。だから、我慢しろ」
「それと、僕が遺体を見て気持ち悪くなることには何の関係もありませんよ」
今月に入って似たような水死体はすでに十体上がっている。海だけでなく、川や湖などでも発見されている。水生生物に食われているということもあるが、この夏の暑さで傷みも早く遺体をより悲惨な状態にしている。身元が分かった全員が、他殺を匂わさせる要素は認められなく自殺か事故という判断に至っていた。
「今回もどうせ自殺か事故なんでしょうね」
マスクの上から、口元にタオルを当てて木崎が口を開く。
「それを判断するのが俺たちの仕事だろ」
「そうなんですけど」
そう応える木崎は、少し不満そうな表情を浮かべている。木崎の気持ちも分かる。俺だって九分九厘自殺か事故だと思ってるよ。でも万が一ってこともあるし、何よりも不思議じゃねぇか。こんな事件なんぞ起きそうにもない片田舎のこの街で、こうも続けて水死体があがるなんてよ。
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