水死体のあがる街

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「仕方ねえな。じゃあ、とっとと仕事終わらせて焼き肉食いに行こうや」 「瞬速で終わらせます」  そう言って、パソコンにキーボードを叩き始めた。こういう素直でまじめな姿を見ていると、面倒をみてやりたくなっちまう。コレが父性ってもんなのかね。  署を出て、焼き肉を食べに木崎の車に乗り込む。 「また、一雨きそうな空ですね」  フロントガラス越しの空には、真っ黒い雲が覆い尽くそうとしていた。 「本当だな。降り出す前に店に入ろう」 「了解です」  そう言って木崎は車を発進させた。しかし、思いも虚しく途中の信号待ちの時にフロントガラスを雨粒が叩き始めた。 「あ〜あ、降り出しちゃいましたね」 「ああ、間に合わなかったな。しかし、今年の夏は夕立が多いな。濡れるのもアレだから、そこのショッピングセンターに中にあるステーキ屋にしないか」 「いいですよ。ステーキも大好きです。あ、あの子達、この雨の中、サッカーやってますよ」  木崎の指差す方をみると、中学校のグランドでこの雨の中練習している学生の姿が見えた。
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