都市伝説ができるまで

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都市伝説ができるまで

数十年前。 日本のとある村で、その都市伝説は生まれた。 「わあ、あの人すごく綺麗。憧れちゃう」 「そこのお姉さん! うちの店、寄っていかない?」 一人の女性が商店街を歩く。 道行く人は皆足を止め、彼女を振り返る。 「ごめんなさい。急いでるから......」 女性にしては低めの声で、受け答える。 彼女は小走りで、商店街を後にした。 「どこかしら......」 路地裏。先程の美人がなにかを探している。 「あ、居た」 一瞬、彼女はその美しい顔に不気味な笑みを浮かべた。比喩などではない本当の意味で、この世の者とは思えないほど不気味な、けれど美しい笑みを。 路地裏の角を曲がった所。そこに一人の少女が居た。迷子だろうか。 「お嬢さん」 美人が声をかける。 「お嬢さん、お母さんやお父さんは?」 「グスッ......いない」 静かに泣く少女が答える。 いない? はぐれたということだろうか。 「迷子? 一緒に探そうか?」 「ううん、わたし、お母さんもお父さんもいないの」 「当たり」 美人がつぶやく。少女には聞こえていないようだ。それにしても、「当たり」とはどういうことだろうか。 「そっか。じゃあ、私と一緒に来る? 一緒に住む?」 「え? いいの?」 少女はポカンと口を開ける。 そりゃそうだ。初対面の女に同居を勧められたのだから。 「勿論。貴女みたいなかわいい子なら大歓迎よ」 「......ありがとう!」 この少女は身寄りがないのだろう。少し考えはしたものの、たった数秒で快諾した。 「じゃあ、帰りましょう。おいで」 美人は少女の手を取ると、優しく微笑みかけながら、少女のペースにあわせて歩きだすのだった。
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