星屑の下で眠る

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 上村くんから2度目の着信があったのは、翌日の夜8時半ごろだった。  お風呂から上がり、ドライヤーで髪を乾かしているときに携帯の表示が目に留まった。私は急いで画面を開く。  昨日と同じ通知不可能の文字が浮かんでいた。上村くんだ。何度か着信音を聞き、あわててボタンを押す。留守番電話に切り替わってしまったら、もう話せないかもしれない。 「もしもし」  しばらく間があった。ほんの数秒のことが長く感じる。やがて懐かしい声が耳に届いた。 「繭子さん?」  少し緊張した、明るい声だった。  ここちよい風が吹き込む。  なぜか目尻に、涙がたまった。 「上村くん?」 「久しぶり」 「久しぶりだね。びっくりした」  私は笑ってしまった。笑いながら、目尻を指でぬぐった。  音は雑音が混じり、あまりクリアには聞こえない。遠い上村くんとの距離を思った。耳元で聞こえる上村くんの声は近く、すぐそばにいるようにも思える。  私は両手で携帯を持った。肩の力を抜こうと、音が入らないようにゆっくりと息をはいた。 「どうして? 急に」 「こっちに来てから、何となく繭子さんのこと思い出して」 「もしかして写真展?」 「覚えてた?」 「電話もらって、思い出したの」  向こう側でも笑い声が聞こえた。  その声は私が知っているよりも大人びて聞こえた。4年という月日は、彼に何を見せていたんだろう。 「あの星空を見ようと思って来たんだよね」 「今も見えるの?」 「まだ日没前だから。こっちは日の入りが遅いんだ」 「そうなんだ」 「昨日見たよ」 「どうだった」 「……すごかった」  短く、シンプルな言葉は、私の心を震わせ、目の前いっぱいに満天の星を映した。どこまでも続く草原に、吸い込まれてしまいそうな夜の空。あの日見たモノクロの写真の景色と、彼の言葉が繋がり、鮮明に広がった。
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