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2 雨のうち晴れ
雨宿りをしていたら突然、声が聞こえた。
声がする方を向くとそこには僕と同じ歳だと思う女子がいた。
「ねぇ、入って行く?」
「……」
声を掛けられてどう答えたらいいのか分からなくなった。
だって全く知らない子だから。
「ねぇ、聞いてる?」
「あっえーと……」
「持っていないんでしょ、傘。だから雨宿りしているんでしょう?」
「はい……そうです」
「じゃあ、送ってあげるから中に入って」
「……」
どうしたらいいのだろうか。まるっきり初対面の知らない人。
どうしたらいい。
「ほら、早く」
「!」
悩んでいたら女の子がこっちに向かってきた。
僕のところにやって来た女の子は僕の手を掴んで無理矢理自分の傘の中に連れ込んだ。
「はい。じゃあ、行きましょうか」
「……」
唖然となった。だって初対面の女子に傘の中に引き込まれて『行きましょうか』なんて言われるんだから。
「どっちに行けばいいの?」
「あっ、えーと、右です」
「右ね」
「はい。よ、宜しくお願いします」
どうしよう。思わず右って言ってしまった。これじゃあ相合い傘だよ。いや、相合い傘は主に好きな人、カップルのイメージだよね。
じゃあ、僕達は何傘。
「ねぇ、何で傘持っていなかったの?」
「あっ、えーと家に干したままで……」
「そうなんだ。運がなかったね」
「そーですね」
この子は誰だろう。こんなに話し掛けてくるし、まるで逆ナンパだよね、これ。
「私ね、こっちに引っ越ししてきたの。ちょっと気分転換に家から散歩していたんだ。一応、折り畳み傘を持ってね」
「そーなんですか」
「そう。ずっと引っ越しの荷物を片付けていると飽きるから、ちょっとした気分転換をかねて外に出てきたの」
「そしたら僕と出会った」
「うん。そんなところだね」
なるほど引っ越ししてきた人なら僕も知らないかぁ~。でも、どこから来たのだろう。随分と話し掛けてくるけど。
「あっ、ここで大丈夫です」
「もしかして着いた?」
「はい。ありがとうございました」
「そんな敬語使わなくってもいいのに。同い年だしね」
「えっ!」
「だって私、中一だよ。君もそうでしょう?」
「うん。中一」
「やっぱり。見た感じそうかなって思ったの」
「僕も何となくそう思った」
「やっぱり! あっ、私明日か明後日には学校に行くんだ。もし同じ学校だったら宜しくね」
「うん。宜しく」
話し込んで気持ちが楽になったせいか、そのときに初めて彼女の顔を見たんだ。
今までは緊張過ぎて彼女の顔を見ていなかったし。
初めて彼女の顔を見た瞬間、可愛いと思ってしまった。彼女の笑った顔を見て。
「あの、気を付けて」
「うん」
「ありがとう」
彼女が来た道を戻り始めて僕は家の中に入ろうと玄関の取っ手に手をかけた瞬間、僕は彼女が気になってもう一度、彼女が歩いている姿を見ようと道路を見た。
「!」
道路を見たら彼女と目があった。彼女も僕と同じ考えだったかは分からないけど、目が視線があった。
テレパシー、以心伝心なんてそんな言葉が頭の中に浮かんだ。なんだか恥ずかしくなって僕は急いで家の中に逃げ込んだ。
あの子と目線があった。
私の中でテレパシー、以心伝心なんて言葉が浮かんだ。
「私の事、覚えていないのかな?」
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