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雨のうち晴れ②
「おーすっ、夕哉!」
「おはよう、智樹。あれ、健祐は?」
「アイツは日直だから日誌取りに行ってる」
「そー言えば、日直だったね。黒板に書いてある」
「そー言うこと。そー言えば、夕哉。知っているか」
「何を?」
「今日、このクラスに転校生が来るらしい」
「転校生」
智樹の言葉に僕は昨日の事を思い出した。
『私明日か明後日には学校に行くんだ。もし同じ学校だったら宜しくね』
(あの子かな……)
「男子? それとも女子なの?」
「珍しい~夕哉が聞いてくるなんて」
「そうかな?」
「そうだな。あまり興味がないときは『ふ~ん』で終わるのに」
「そうかな」
「まぁ、いいか。えーと、男子って聞いたかな」
「へぇー、男子なんだ」
(あの子じゃあないのか。……転校生でなに期待しているんだろう、僕は)
キーンコーンカーンコーン。
「チャイムなったぞ」
「健祐、おはよう」
「おはよう、夕哉。ほら、自分の席に戻るぞ、智樹」
「ほいほーい」
健祐が来たからそろそろ先生も来るだろう。智樹は健祐に連れて行かれた。
しかし、転校生が男子ならあの子は違う学校に行ったんだなぁ~とし~んと静かな教室で再び思い出していた。
ガラガラ。
「おはよう」
「「「おはようございます」」」
「出席をとる前に今日からこのクラスに転校生が来た」
先生の説明で僕のいる席から一つ斜め前の智樹がいかにも『言った通りだろ』とドヤ顔しながら僕を見てきた。
はいはいと思いながら頷いてみせる。それを見た智樹が前を向く。
「今日からこのクラスで一緒に勉強をする清白友理奈さんだ。みんな、仲良くするように」
「「「はーい!」」」
「じゃあ、友理奈さん。入って」
(ん?ま・て・よ。今、先生……何て言った。名前からして女子だよね。智樹……何て言っていた)
『男子って聞いた』って言っていたはずだけど?
「!」
(あーあ、そう言うこと……)
話が噛み合わない理由が分かった。
智樹……騙したなぁ。
智樹の席をみると智樹が可笑しそうに肩をふるわせていた。つまり笑いをこらえている。
あとでしばく。デコピンでもくらわしてやる。
「清白友理奈です。こちらに引っ越ししてきました。小学生の時はこっちに住んでいたので、もしかしたら会ったことがある人もいるかもしれません。宜しくお願いします」
(清白友理奈……。うん、清白? どこかで会ったことがあるような……ないような?)
彼女の名前を繰り返したときにどこか違和感を感じた。
僕は彼女の事を知っているようなそんな気がするみたいな感覚に。
でも、勘違いかもしれないし分からない。
「!」
彼女が教室を見渡しているときに自然と目が合ってしまった。彼女は僕に気がついてニコッと微笑んでいた。
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