雨のうちくもり

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雨のうちくもり

 彼女が転校してきてから二週間が過ぎようとしていた。  彼女、清白さんもすっかりクラスにとけ込んでいた。  クラスの中には清白さんのことを知っていた人は数名いたらしい。まぁ、僕が実際に聞いた訳じゃあないから分からないが。    「夕哉。一緒に帰ろうぜ」  「ごめん、智樹。委員会」  「そっか~。それは残念」  「智樹。部活は?」  「今日は休み。先生と三年生がミーティングでミーティング出ない人は部活休みだって」  「そっか~。あれ、健祐は?」  「健祐は先に帰った」  「そうなんだ」  「じゃあ、俺も帰るわ」  「誘ってくれたのにごめん」  「いいよ。また今度なぁ」  「うん。 じゃあまたね」  「また、明日」  智樹が教室をさっていって僕も委員会に向かった。  で、このパターン。帰りが絶対に遅くなる。そして今日はなぜか空が曇り。これは雨がまた降りそうなそんな空模様。  けど、大丈夫。今日は天気予報で夕方から雨が降る確率が高いことを知っているから傘を持ってきた。  それに午前中も少し降ったらしいから、今日は傘を持っていて安心な一日だ。  「さて、帰るか」  「あれ、天野君。今から帰るの?」  「!」  突然、声を掛けられて後ろをみるとそこには、清白友理奈さんがいた。丁度、靴を履き替えているところだ。  「今から帰るの?」  「そう。委員会で遅くなったから」  「そっか~。委員会かぁ。私も委員会で遅くなったの」  「そうなんだ」  「そう。あっ、せっかくなんだし、一緒に帰ろう」  「えっ!」  「嫌だ?」  「そ、そう言う訳じゃあないけど……」  「じゃあ、帰ろう!」  友理奈さんが僕の鞄を引っ張って誘導を始めた。凄い強引な事をする。   僕が歩き出したら鞄から手を離して二人で帰って行く。  (何か会話をしないと……そうだ!)  「友理奈さん。もう、学校に離れたの?」  「うん、それなり。移動教室があるとまだ場所が分からない時もあるかな。あとは平気かな」  「そうなんだ。そー言えば、友理奈さんの事、知っている人たくさんいた?」  「それもそれなり。まだ、話し掛けてこない人もいると思うよ。ほら、隣のクラスとか」  「あ~あり得るかもね」  ゴロゴロ。  「あっ、雷。今日は大丈夫そうだね、傘」  「大丈夫。あの日はたまたま忘れただけだし。友理奈さんは?」  「大丈夫。天気予報でも、夕立があるかもって」  「言っていたね」    ゴロゴロ。ザーザー。  「うわぁ、降ってきた!」  「降ってきた。傘、傘!」  二人して傘をさしてまた、歩き出す。  「友理奈さんと出会った時も雨が降っていたよね」  「そうだね。偶然かも知れないけど、どっちか雨女か雨男だったりして」  「まさかぁ~」  「「あっははは!」」    二人同時で笑い出した。  あまり学校で女子と話す事が少ない僕だけど、自然と友理奈さんとは話せる。  何でだろう?  「あっ、ここでお別れだよね」  「そうだね。覚えていたんだ」  「まぁ~ね。この町に来て始めに話した子の家付近だしね」  「そう言うもん?」  「そう言うもんだよ」  「友理奈さんは、どの辺?」  「ここを左に行くの」  「そっか。じゃあ、また明日学校で」  「うん。また明日」  友理奈さんと挨拶を交わして僕は真っ直ぐ歩いていく。  「ねぇ、天野君!」  「!」    僕は後ろを見た。    「私の事、友理奈って呼んで! さん付けじゃあなく! もしくはちゃんでもいいから」    突然の友理奈さんからの申し出に僕は。  「……分かった。分かったよ友理奈。これでいい?」  「うん。ありがとう!」  「また明日」    急に照れた僕は『また明日』ともう一度、友理奈に声を掛けて歩き出した。    「またね」  私は最後に一言『またね』と呟いて歩いた。聞こえていないと思うけど。      『あれは……』  『……』
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