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7 ラブレター
大きすぎる音が会場には満ちていて、攻撃されているようにも感じられた。
曲の変わりにarisaの名前を呼ぶ声。時間が進むにつれてそれが羨ましくなってきた。おれが見つめているリョウさんは思っていたよりも頻繁に登場してくれて、だから、おれもあの人の名前を呼びたくなった。
夜の公園で見るときよりも、リョウさんはやっぱり素敵だった。
全身全霊という言葉がこれほど当てはまるものもないだろう。曲を理解し、歌うのではなくその体で表現する。arisaの世界の一部を手助けし、完成させる。優しい歌には優しさを、寂しい歌には切なさを、狂おしい愛には湧き上がる熱情を。
リョウさん、と叫びたかった。でもできなかった。これがarisaのライブステージだからではなく、ただ声が出なかった。
時間が経つほどその名を呼びたくなるのに、喉の奥で詰まったように出てこない。頭の中で反響し、溢れ、それでも零れ落ちはしない。悲鳴のように乾いた音が開いた口から出ても、それは自分にしか聞こえない。
今、arisaのファンはリョウさんを見ているだろうか。この世界を作る一部となる人を見ているだろうか。
届かない叫びを胸の中で繰り返した。
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