8 一生

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 半分凍らせたペットボトルのお茶をもって、夜の公園へと向かう。  もしかしたらリョウさんは早く来るかも。もしかしたら遅く来るかも。  来ることに期待して、それでも待つ気でいた。日は暮れ直射日光がない分暑さは減っているが、代わりに湿度がある。うっかり行き倒れていたら笑いものにされてしまう。  頭から足先までかけた虫除け。効くのかわからないリング状のものまで手首にぶら下げて歩く。  来るかな、来ないかな。ライブツアーは昨日で終わっている。今日飛行機に乗ったなら、来てもおかしくはないだろう。  自分に都合よく考えて、あの小さなステージに腰掛ける。雨は降っておらず人の気配もない。手元のスマホでarisaのその後を追った。もしかしたらライブDVDの販売があるかも。いやきっとある。それが決定しましたなんて情報が上がるのはきっとすぐのことだろう。 「何してんの」 「あ、リョウさん」  やった。会えた。  リョウさんに会えばいつも通りのぱっとしない公園内が、はっきりとした姿を見せる。干からびた後の雨を予感するように緑は生き生きとしているように見えるし、それを照らす街灯だって曇ってはいない。拡散された光が木々の間に彼の影も作り出す。 「arisaのライブDVD販売来ないかなって見てました。撮影はされてますよね、絶対」 「うん。してる。売るかは知らん」 「問題がなきゃ売れると思うんですよ。問題ってもどんなのが引っかかるのかは知らないんですけど」  映しちゃいけない人が映っているとか、あるんだろうか。  とっさに自分が参加した公演を思い出した。ファンのことをつぶさに見たわけではないけれど、そんなおかしな格好も声援もなかったと思う。もし有名人がいたのならarisaのファンだとしてもきっとその人を窺う人は多くいて、視線や噂が飛び交っていてもよかったはず。でもおれが参加したときの公演がまるっと使われるわけでもないだろう。
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