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あれから数日後、部活のコンテストが開催して、颯太の写真が入賞したのだ。
「颯太、おめでとう!」
「ありがとうございます。近藤さんのおかげです」
入賞したので、地区大会に出場する権利が得られた。
もちろん、そこ敏郎も出場する事になっている。
(げっ! なんでお前まで? 嫌味か、嫌味だと言え)
無言で敏郎を見つめる颯太の目から、バチバチと火花が散っているように見える。
「敏郎もよかったな。俺は、銀という結果に終わってしまったよ。だが、地区大会に出場するから、うかうかとしてられないな」
ガハハと勇臣は笑った。
あんた、随分のんきですね……と棒読みをしたくなる。
「部長、今年の大会参加者は何人ですか?」
「ちょっと待ってよ。……10人だな。少ないのか多いのかわからないが、やれる事をやろう」
パラパラと大会用の一覧表を見て勇臣は話した。
「お? みんな揃ったな。今回の地区大会参加者も、残念ながら大会に行けなかった部員たちに大切な話がある」
そう切り出して、勇臣は大会のスケジュールについて説明をした。
「部長! 残った俺たちは何をすればいいんですか? 部長がいないのに、活動なんてできません」
一人の男子が挙手してから発言をした。
「顧問の先生から詳しく説明がある。先生、あとはよろしくお願いします」
「近藤から代理人も任せられた部員がいるから、その辺の心配は無用だ」
「誰なんですか? その代理人ってもちろん部員の中から選んだんでしょう?」
真面目そうな部員が聞いた。
「OBの人だ。お前たちの大先輩にあたる。中倉雄馬という。あした改めて紹介をしよう。きょうは、もう質問なければこれで終わるぞ?」
「中倉愛美という女子がクラスにいます。もしかして、兄妹ですか?」
珍しく颯太が話に加わった。
「そうだ。沖田のクラスに妹さんがいるとは、世間は広いのか狭いのかわからないな。他には?」
先生が周りを見ても質問はなさそうだと判断したので、またあしたと締めくくり部室から出ていった。
お疲れ様でしたとパラパラと部室から、部員たちが帰っていく中、まだ勇臣と敏郎と颯太は残っている。
「颯太は、その子の事が好きなのか?」
「いえ、そうではないです。中倉って珍しい苗字だから、クラスにいたなと思って聞いただけですよ。どうして俺が好きだと?」
「いや、特に意味はないよ。何となく聞いてみた。さてと、俺たちも帰って大会の準備しないとな」
勇臣たちも部室から出たので、誰も部屋にはいないのに事件は起きたのだが、それは少し先の話。
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