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ハブられてる?
あれから数週間後、颯太にたいして挨拶をするクラスメイトはいない。
「沖田君、おはよう」
「はよ。てか、俺に話しかけて大丈夫? 気をつけろよ?」
ハブられてそうな予感がした颯太は、挨拶をしてきた愛美に小声で注意をした。
「あ、うん。ごめんね……」
なぜか謝る愛美にたいして、颯太はイラッとするが教室では話さない事に決めた。
ぼっちに何も係わらないほうが身のためだと、颯太は愛美にたいしてそのように思うようにした。
席を立ってトイレに向かった。
教室にいると、なんだか聞こえない幻聴まで聞こえてきそうで怖い。
トイレにクラスの熊井が入ってきて、颯太に並んで用を足しながらこんな事を言った。
「うちの学校の裏サイトで、お前、かなりデスられてっから。書いたの多分、桜井なんだと思うけど気をつけろな」
「忠告ありがとう。デスられてるか……マジか。まぁ、仕方ないよな。中倉にあんな事言ってろくに謝ってないもんな」
「くまのプーさんってのは、俺はデスったように聞こえなかったけどな。女は、可愛いマスコットに例えても体型の事指摘されたらムキになるんじゃね? てか、桜井がムキになったの意味わかんなかったけどよ。たまに、こっそり教えるわ」
「なんだそれ? ちょっと用あるから戻って」
二人して手洗いを済ませると、颯太は教室とは反対方向に進んで歩いていった。
「あ、うん。まさかと思うけど、お前……違うよな?」
「ん? そうヤワに見える?」
へらっと笑って颯太は、早く教室に戻れと言わんばかりに、手をシッシとやった。
(俺がいちゃダメなんだ……。ごめん、弱い奴で。近藤さん……部活に行けそうにないよ……土方……お前は気に食わないけど、最後くらいはきちんと挨拶したかったな)
颯太は、屋上に来た。
スマートフォンのカメラで屋上から見える風景をおさめてから、颯太は足を金網に引っ掛けて登り始めた。
ぐらついたが、気持ちを強く持っている颯太はそれ程度で引き換えしはしない。
金網を超えた先から手を離して、ゆっくりと上体を前のめりにしたらふわっと身体が宙に浮き、視界に入るのは芝生だ。
コンクリートじゃないと、きっと落ち損じてしまう。
そんな事を考えながらも、颯太の身体は少しずつ地面に近づく。
「颯太アアア! 待っていろオオオオ」
落ちていく自分に、誰かが叫んだかと思うとどこから持ってきたのか、颯太が落下するであろう場所に何かを敷いてなおかつ両腕で受け止めようとしているのか両手を広げて立っている生徒がいる。
(近藤さんが、何故ここに?)
疑問に思うものの、落ちていく自分は死を覚悟しているので、途中で下手に巻き込みたくはないなとは思っても、下手に声を出さない事にした。
スピードにしたら早いのか遅いのか、映画のワンシーンのようにゆっくりと見えるのはなぜか、颯太にはわからない。
自分でもしょうもないなとは思っても、口が勝手に意地悪な事を言ってしまう。
(てか、俺……まだまだメス豚いじりてぇのに、身を投げてるとかどーした、俺? 近藤さん、助けろ!)
本気で消えたいわけではない事に、いまさらながら気づいた颯太だったけど、遅すぎるだろ、どう見ても。
口を開きたくても風の抵抗で動かない。
視界にしっかりと近藤さんの姿を捉えたけど、間に合うの? マジ、阿保な事考えた自分恨んでいい?
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