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勇臣のその両腕におさまりたいんだけど?
「颯太アアア、俺、ここだからアアア」
ワイシャツまで脱いで何かの敷物の上にそれを重ねた。
「どうした? 何が起きている?」
「あ、用務員さん、あの、落ちてきてる少年を助けたいんで、手伝ってくださいイイイイ」
「わかった! 待っておれ!」
おじさんは、どこかに行ったけど、颯太が落ちるのが先か、ギリ助かるのか……。
ドサッ!
今、落ちたよね? だって、ドサッと音がしたから。
ウグッ! とうめき声が聞こえた気がするが、颯太の気のせいだろうか。
(あり? 俺……痛く、ない?)
プカプカ雲が浮かんだ空が見えている。
そして、颯太の顔を覗き込むおじさんの顔は、何とか確認出来たけど、勇臣はどこにいるのだろうか。
「うぐぐっ……ギブ!」
「え? あ?」
変な声(うめき声か)がするので、上体を起こして半捻りをして後ろを見ると、勇臣が颯太の下敷きになっている。
慌てて勇臣の身体の上から退けた。
「近藤さん! ありがとうございます!」
勇臣に礼を述べる颯太に声をかける人がいた。
「坊主! お前さん、助かったのか! 命は粗末にするもんじゃないぞ! こんないい仲間がいるのにもったいないねぇな!」
おじさんが、これでも飲めと飲料を渡してきた。
「あ、ありがとうございます。それから……ごめんなさい……。俺、二度とあんな真似しません」
飲料を受けとると、颯太は涙で視界がぼやけていてもきちんとおじさんに頭を何度も下げた。
「助かったから良かったものの、そこにいる少年が必死だったから使えそうなのいろいろ持ってきて、そこに敷いておいて正解だったみたいだ。その飲料はやる。無茶するな。キャパ超える前に誰か頼れ。いいな? それじゃ、おじさんは仕事に戻るよ」
ポフッと颯太の頭を撫でると、おじさんは校庭の庭仕事に取り掛かる。
「ありがとうございました!」
お腹の底から声を出して、その背中に礼を述べると颯太は、勇臣にも再び、礼を述べた。
「颯太の悩みに気付かないなんて、俺は部長失格だ」
「あ、いや……、部活は楽しいですよ。ちょっとクラスにいたくないなと思って……だけど、あのおじさんに言われて気づいた。俺は一人じゃないんすね。近藤さんが、偶然にも校舎にいたから助かったんだな……。でも、なぜ校庭に?」
「探し物していた。そしたら、なんか上から気配感じてよ? 見たら、部活の後輩じゃん! やべーって思ったら、助けたい一心で必死だった。作業服着たおじさんが、声かけてきたから事情説明して、今に至る。あ、呼ばれてるから戻るぞ。放課後、部室で会おう!」
「お騒がせしました。後で、また」
颯太は、ぺこりと頭を下げて小さくため息をついてから、教室に戻った。
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