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天国から地獄
同時に目を覚ました優馬としずく。
「あ…おはよう」
「うん…おはよう」
「あの、昨日は夢中でよく覚えたないんだ。しずく、大丈夫だった?」
「何が?」
「いや、その、もしかして、しずくは経験豊富?」
「とんでもない! 優馬が初めて」
「あ、そっか」
「それより優馬、凄すぎ。死ぬかと思ったよ。優馬は経験豊富なの?」
「と、とんでもない! しずくが初めて」
「そっか。安心した」
「それより、死ぬかと思った。って、大丈夫?」
「正確には、天国にいくほど気持ちよかった」
「そうなの?」
「初めてなのに、3回。もう、恥ずかしいよ」
「あ、ごめんね」
「あれ? 優馬、俺様モードはやめたの?」
「あ、考えたら僕には似合わないかなって。僕モードは嫌い?」
「……優しい優馬が好き」
「じゃあ、僕モードでいいかな。僕もこっちが楽だし」
「うん。でも」
「ん?」
「夜は俺様モードになってほしいな……」
「しずく……分かった。夜は俺様になるよ!」
「もう、朝から恥ずかしい」
「でも、たまには朝から俺様モードもいいかな?」
「え?」
「今」
「今から?」
「うん」
「……いいよ」
「しずく、天国にイカせてやる」
「優馬、好き」
・・・・・
「透、2人はこんな会話をしている」
「盗聴器まほろ。だな」
「超高性能。優馬としずくは新婚ホヤホヤ。左の家を貸せばよい」
「あ、そうだな。家賃は月1万円で」
「そう」
「よし、俺は家賃収入で儲けるぞ」
「2軒では2万円。ボケたの?」
「不動産をたくさん買って、それを貸して儲ける」
「なるほど。濡れ手に粟」
「いや、元手は必要だからな」
「透のお金は棚ぼた」
「確かに俺は少ない投資で大きなリターンだけど」
「無名な会社の大株主になれば、超リターン」
「なるほど。超安値の株を俺が買うと、勝手に超高値になるんだな」
「そう。その濡れ手に粟のお金で不動産投資。透は会長、私は社長、優馬としずくは役員」
「なるほど」
「優馬としずくは、死ぬまでお金で失敗する運命」
「そうなのか?」
「それは透とマブダチになった宿命。私の豪運(幻)でも変えれない」
「そうか」
「優馬としずくは、仕事で常に大損失をやらかす」
「それ、責任を感じて飛び降りとか」
「私が意識を半分乗っ取り、そのへんの罪の意識は曖昧にする」
「なるほど」
「透は、優馬としずくがやらかした大損失を補填する役目」
「分かった」
「優馬としずくが大損をして、透がそれを補填後に少しだけ得をする。それで社会は回る」
「そうだな。少しだけだ。過ぎたる金は」
「身がボロボロ」
「魚かよ。身を滅ぼすだな」
「そうとも言う」
・・・・・
「透、優馬が仕事でやらかした」
「スーパーで?」
「そう。仕入れ値1000円の扇風機30個発注するのを30万個発注」
「はい?」
「そんなに入る倉庫は優馬が働くスーパーにはない」
「いや、待て、流石におかしい」
「それが透の豪運(金)の反作用」
「マジかよ」
「約3億円の損害賠償問題に発展。自殺しないようにスーパーの役員たちに軟禁されている」
「すぐに取引先に謝れば」
「無理。もう取り消しは不可能。それが透の豪運(金)の呪い」
「3億円、払いに行くか」
「待って」
「え?」
「しずくが仕事でやらかした」
「おいおい」
「仕入れ値300円の高級石鹸を100万個発注」
「ぶははっ! 笑うしかねえな」
「確かに笑える。今世紀最大ヒット」
「その損失はこちらも約3億円の損害賠償問題。こちらも自殺しないように軟禁されている」
「まほろに言われて小切手を作っておいて良かったな」
「私は未来が少しだけ読める」
「推理だよな」
「そうとも言う」
「一応、信用してくれないと困るから、小切手用通帳も持っていかないとな」
「人は疑う生き物。たまに疑わないカバもいる」
「カバじゃなくてバカだな」
「そんな生物」
「たまにいるな」
「うん」
「そっちは、しずく行ってくれ。小切手用通帳は幻想で。あ、小切手は本物だぞ」
「分かった」
・・・・・
「社長、お客様が」
「今はな、我が社の存続がかかった会議をしている」
「その問題を解決されるとか」
「は?」
「木村優馬さんの保証人らしいです。凄い資産家だと申してます」
「……ダメ元か。通してくれ」
「はい」
「優馬、何か困ってないか?」
「と、と、透!」
「困っていたら助けるぞ。俺の会社で働いてくれるなら出世払いで」
「は、働くから助けて!」
「分かった。金で解決するのか?」
「う、うん」
「いくらだ?」
「……3億円」
「たったの?」
「たったのって……」
「そんな端金で死にそうな顔をするなよ。俺の親友だろ、お前は」
「あ、うん」
「代表者は?」
「私だが」
「これ、俺の小切手用通帳。残高100億円ね。で、はい、3億円の小切手」
「は?」
「数字、読めない?」
「……換金しないと信用できない」
「じゃあ、すぐに行ってよ。それまでここで待つから。いい椅子とお茶、饅頭もよろしく」
「あ、ああ」
それから30分後に優馬は開放された。
「流石にな、こんな事をやらかす社員は……分かるな?」と、その場で退職届を書かされて。
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