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適当で
【豪運不動産】
「まほろ。この会社名、派手だな」
「普通の会社名」
「いや、しかし」
「豪運不動産、良いと思います」
「まあ、不運不動産よりは良いけど」
「会社名で千客万来」
「逆に怪しまれそうだ」
「相場より3割安く貸して売って大サービス」
「良いのか?」
「空き部屋が出るより良い。どうせ赤字でも透が払う」
「まあ、そうだけど」
「社長、専務、遅くなってすみません」
「すみません」
「夜にやりすぎ遅刻」
「あ、まあ……」
「やりすぎって……」
「優馬、仕事に支障がない程度にな」
「あ、うん」
「まほろ専務、会社名は……豪運不動産? 何か凄いというか」
「ふむん」
「何というか、凄いとしか言えない」
「でも、ここで借りたり買ったりすれば運が上がる気もするよね」
「そうだね」
「優馬としずくは部長。何の部長にするかは決めて」
「自分たちで?」
「そう」
「決めてと言われても……僕は営業部長は無理そうだし」
「私は総務部長くらいかな」
「優馬は営業部長に決定」
「え?」
「営業部長と総務部長の二択のみ」
「そんな」
「社員を雇えば悩みも解決」
「あ、なるほど。その道のプロを雇えばいいのか」
「札束でほっぺをペチペチして引き抜き」
「そんな事をしたら、その会社に恨まれるよ」
「そうそう」
「そこは大丈夫。私が話をつける」
「まほろが?」
「透の金の力で」
「あ、人的損失をお金で損失補償するのか」
「そう」
「あのさ、普通にハローワークに求人を出せよ」
「あ、そうだよ」
「そうよね」
「ガーン。やり手引き抜きウーマンまほろ、失業」
「大丈夫。豪運不動産で専務として雇ってやる」
「透、超上様目線」
「上から目線な」
「そうとも言う」
「面接とか優馬としずくに任せる。とりあえずは事務1人、営業1人な」
「できるかな?」
「人間なんてそんなに能力に差はないさ。資格持ちなら適当でいいから」
「資格持ち?」
「最低でも事務は簿記1級、営業は宅地建物取引責任者」
「分かった」
「優馬、俺とまほろは謎の社長と専務キャラだからな。会社には絶対に行かないからよろしく」
「何かよく分からないけど、分かった」
「しずくと一緒に適当な物件を探して適当で事務所を開業してくれ」
「適当でって……」
「どう頑張っても失敗する時は失敗する。適当でいいんだよ」
「そう言われたら、そうかも」
「そうだね」
・・・・・
「まほろ、俺と強く関わる人間は金に関する事で不幸になるんだよな」
「それが運命」
「俺と金に関する事で強く関わったり、俺と親しくなって顔や名前を強く思ったり考えるとだよな」
「イエス」
「だから、車を買うときもまほろの豪運(幻)を使って偽名で買って顔も変えたわけだが」
「うん」
「このマンションを買うときは、おっさんに代理人をしてもらったが」
「ほう」
「知らず知らずに俺は誰かを不幸にしてるのかもな」
「知らず知らずに人を何人も殺している人も何万人もいる。500人殺したり」
「え?」
「人をひき殺した車を造った人、墜落事故を起こした飛行機を造った人。考えたらキリがない」
「……確かに」
「だから、考えるな」
「そうだな」
「この話は終わり。これから夜のサービスタイム」
「あ、おい」
「良きかな、良きかな」
・・・・・
透の住むマンションに隣接する商業ビル。そこに優馬としずくは豪運不動産の事務所をオープンした。
「家から近くて楽ね」
「そうだよね」
「今日は面接だけど、優馬は営業部長なんだから、僕モードは駄目だよ」
「え?」
「ナメられるからね」
「あ、そうかも」
「お客様、家族、透、まほろ以外には俺様モードでね」
「分かった。総務部長、面接の準備をやるぞ」
「はい、営業部長」
面接には多くの人が来た。
事務所の場所も最高だし、給与も相場の1.5倍、休みも大手企業なみだったから。面接に来た人には交通費として3万円を支給するから、交通費3万円目当てに来た人も多かった。
面接の結果、高卒の人を選んだ。優馬としずくも高卒だから大学の話題を言われても困る。
面接中に、(あ、大卒を採用したら、部下に「部長はどこの大学ですか?」と言われても困るよね)と思った2人だった。
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