豪運持ちの宿命

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豪運持ちの宿命

出前をとった極上(松)サビつきの寿司をパクパク食べる豪運持ちの子供が目の前に3人。   それを見ながら透は自分の豪運(金)について考えていた。 (俺の豪運は二十歳の誕生日に発動した。(幻)持ちは5歳より前か。(愛)と(無)も児童養護施設にいたと言うことは、かなり小さいときに発動したんだろうな) 豪運持ちは発動した日から運がよくなるが、自分以外の家族はだんだんと不運になる。 (俺は二十歳で(金)が発動したからな。3歳くらいで発動していたら、両親は俺が手にする金目当ての金の亡者になっていたかもな) 透の両親は老舗料亭を引き継いで経営はうまくやってそこそこ裕福な家庭だった。透が成人するまでは。 透は末っ子で社会人の兄と姉がいる。両親と兄姉は透が成人した日から金に関するトラブルが増え、金に困る事が多くなった。 透が21歳になる頃には両親と兄姉は自己破産した。老舗料亭も人手に渡り、透は引きこもりだったから、引きこもる部屋を失った。 おっさんから、そんな事が近い未来に必ず起こると言われていた透は、自分だけで引きこもる部屋を確保していた。 それが今住んでいる超高級マンションだ。 宝くじを買うと必ず1等当選。馬券を買うと必ず史上最高配当金になる。 透は22歳だが、100歳まで生きても生活に困らないお金をすでに貯金しているのだ。 (お前たちの家族もみんな不幸になったんだろうな) 透は自己破産した両親と兄姉に半年間はお金を援助していた。   何をしても金に困る両親と兄姉は働くのをやめて、透の金に頼るようになる。 要求される金額もだんだんと増えてきて、流石に何に使うのか聞くと、『うるせえ! 黙って出せばいいんだよ!』とか、狂ったように叫ばれた。   おっさんには、家族が自己破産したらすぐに音信不通になれと言われていたが、透は半年間も援助してしまった。 透は自分の甘さをおっさんに笑われた。 「まあ、二十歳まで育ててくれた恩はあるからな。兄姉にも小さな頃は可愛がってもらったり、小遣いをもらったりしてたんだろ? でもな、透が家族に関わるとますます家族は不幸になる。透の顔を見るだけで、透の声を聞くだけで、家族は金運を失っていくんだ。分かるな」 (まったく、よく分かったよ。おっさん) 「俺が成人した日から両親や兄姉と音信不通になっていたら、両親や兄姉は自己破産しなかった! おっさん! どうしてそれを教えてくれなかった!」 そう叫んだ俺に、おっさんは優しい声で言ったな。 「透、お前の両親と兄姉が自己破産するのは決まっていた未来なんだ。お前が側にいようといまいとな。俺には見えていた。だから、自己破産したら音信不通になれと言ったんだ。自己破産するまでの家族の金の困り方をよく見ただろ? お金は怖い。それを肌身で知ることもお前のためだ」 透は目の前の3人を少し困った目で見た。 「俺はな、発達障害で他人の気持ちとか空気とか読めない時がある。変な事を言うかもしれんが、あきらめてくれ」 寿司を食べてる3人に言った。 「もぐもぐ。私も発達障害だよ。学校も行ってない。愛と(ない)も」  「さっき夏休みって」 「日本全国、学校は夏休み」   「確かに」   「透」 「ん?」 「これから透が死ぬまでよろしく」 「何を?」 「聞いてない?」 「何をだ?」 「私達は透が死ぬまで透と住むこと」   「そうか。はい?」   「おっさんは幼い豪運持ちを探す旅に出た」 「……なるほど。お前たちは十分に大きく……そんなに大きくはないが、ある程度は成長したからか」 「そう。他の不幸な豪運持ちを助けるって」 「そんなくさい台詞をおっさんが言ったのか」 「言ってない。私の想像」 「そうか」   「うん」   「デザート食べたい」 「アイスクリーム食べたい」 「私はケーキ」 「いいぞ。今日は俺がおごってやる」 「ん? 透は死ぬまで私達におごるんだよ」 「……だろうな」 「「「当たり前」」」 (……お前らな。まあ、いいけど。金は捨てるほど持ってるよ)
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