新しい家族

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新しい家族

「まほろ」   「車の中だからイチャイチャする?」 「8年後からな。考えたら愛の豪運(愛)で証人は……親しい友人は簡単に作れるな」 「なるほど。透はイルカより頭は良い」   「褒められてるのか分からんけど。愛が側にいれば、俺のお願いは法律違反以外は引き受けてくれるよな」 「愛のままに」 「これは楽勝だな」 「おっさんは言ってた」 「何を?」 「透は友人も貧乏にする。疫病神だな。家族ほどには不幸にならないが、最低限の生活レベルになる。友人になるなら死ぬまで面倒を見させろよ」 おい。    「俺は友人も作れないのか」 「大丈夫。私達におごるみたいに友人にもおごればいい」 「友人もすぐに金の亡者になるぞ」 「ナイトがそんな悪い心は無くせるから大丈夫」   「なら、俺の両親や兄姉も!」 「それは無理」 「え?」 「豪運持ちの肉親にはナイトの力は効かない」   「……そうか」 車が止まった。 「透、言うか言わないか迷うけど」 「言ってくれ。大切な事なんだろ?」 「これを聞くと透が透で無くなるかもしれない」 「……そうか。俺の両親と兄姉はもう死んでるのか」 「透、エスパー?」 「そんな気もしてたからな」 「死因とか聞きたい?」 「知ってるのか?」 「おっさんの他には私だけ」 「そうか。まほろに辛い役をさせてごめんな」 「ううん。私は透の奥さんだから」 「死因か。だいたいの想像はできる。聞かないでおくよ」 「そう」 「1時間、近くを散歩してくる」 「私の胸で泣いてもいいよ」 「8年後に頼む」  「その時はEカップ」 「おっさんに聞いたのか?」 「そう。ボン、キュッ、ボンのスーパーウルトラナイスバディ」 「それは楽しみだ」 「うん」 ・・・・・ 「待たせた。出発するか」 「うん。くじ引きで決める?」 「何を?」 「親しい友人にする2人」 「そうだな」   「作っておいた」 「流石は俺の奥さんだ」 「うん」 あみだくじか。 「ここと、ここ」 「何が出るかな〜〜〜はい。5番と28番」 「出席番号5番と28番、ぜんぜん覚えてない」 「木村優馬くんと佐藤しずくさん」 「男と女か」 「女のほうは私が友人になる」 「そうだな」 「木村くんの実家に行ってる」 「先に木村くんか」 「透、緊張する?」 「緊張か。おっさんに会わなかった世界の俺なら、木村くんに会いに行こうとも思わなかっただろうな」 「おっさんとの時間で透はレベルアップした」 「そうだな。規格外、想定外のおっさんだしな」 「私と愛とナイトもおっさんと暮らしてレベルアップした。ドラゴンも倒せる」 「勇者パーティーだな」 「私は幻の魔法使い。愛は誰からも愛されるヒロイン。ナイトはヒロインを守る騎士。だから勇者は透」 「俺は勇者か。なら、頑張らないとな」 「そう。透は貧乏神じゃなくて勇者。貧乏魔王から友人を救う勇者なの」 「貧乏魔王か。それは強そうだな」 「勇者透の必殺技、豪運(金)の敵ではない」 「不思議だな。この勇者パーティーならどんな困難にも負けない気がする」 「透。昔の家族を忘れてとは言わない。でも、私達は透の新しい家族。それを忘れないで」 「……まほろ、マジで10 歳なのか?」   「この姿も本当は幻覚かも」 「そうか」   「でも、私が透を愛してるのは現実だから」 「私も透は好き」   「僕も」  「お前ら……まほろ」   「何?」 「やっぱり、その胸を借りていいか?」   「いいけど、小さいよ」   「どうしても借りたい」   「いいよ」   「ありがとう」 「うん」   まほろの小さな胸に顔をうずめ、声を出さずに泣く透。 しばらくして、まほろは透にたずねた。 「落ち着いた?」   「温かい胸だ。これは間違いなく幻覚じゃない」 「うん」 今度の家族は絶対に不幸にしない。そう心に決めた透だった。
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