Spoon殺人事件

※音声配信アプリSpoonをネタにした作品です。

探偵　被害者の○○さんは内側から鍵がかかった密室で、
　　　スマホをにぎりしめたまま倒れていた。

女性　えぇ。本当に残念な事故です。
　　　まさか、○○さんが配信中に亡くなるなんて。

探偵　あなたは被害者の○○さんとは面識があったんですか？

女性　いいえ。お会いしたことはありません。
　　　でも、Spoonの枠には毎日通っていました。
　　　○○さんの声って、すごいんです。
　　　魂が内側から揺さぶられるような素晴らしいお声なんです。
　　　五臓六腑に染み渡るというか、
　　　もう、毛穴から即吸収されて長生きできますよ。
　　　聞いているだけで、浄化されて昇天します。
　　　配信も、企画が本当に天才で！
　　　目の付け所が違うっていうか、控えめに言っても最＆高。
　　　あの素晴らしさを全世界にお伝えしたい！
　　　ちなみに、わたしは末代まで語り継ぐ覚悟です。

探偵　なるほど…。
　　　あなたはバスターもかなり投げていたそうですね。

女性　もちろん！推しのために課金するのは、あたりまえです。
　　　私の働いたお給料が、○○さんの血となり、肉となる…
　　　そして、私は○○さんの配信を聞いて、生きる活力を頂く！
　　　これはまさにサークル・オブ・ライフ！
　　　積みます！いえ、積ませてください！
　　　これはお布施です！ご利益あるので、実質タダです。

探偵　…そうですか。
　　　ちなみに、○○さんが配信中に亡くなられたとき、
　　　あなたはどこで何をしていましたか？

女性　自宅で配信を聞いてました。
　　　いつもどおり枠の皆さんにも、○○さんの良さを布教してました。
　　　○○さんはとても謙虚な方なので、
　　　「そういうのは恥ずかしいからいいよ」って言ってくれるんです。
　　　そういうところが、また、尊いんですけど。

探偵　で、○○さんは、配信中に突然苦しみだした…と。

女性　はい。急に言葉に詰まったかと思うと…
　　　もう、この先、○○さんの配信が聞けないなんて、
　　　私、どうやって生きていけばいいんでしょう。
　　　…あの、これ、事故なんですよね？

探偵　えぇ…本当に残念な「事件」だと思います。
　　　まさか、○○さんも、自分が亡くなるとは、
　　　思ってもいなかったと思います。

女性　え？

探偵　○○さんの死因は…「褒め殺し」。
　　　本人の持っている器以上に褒められ、持ち上げられたことで、
　　　呼吸、脈拍、体温に異常を生じ、結果、死にいたるという。
　　　まさかそんなことで、人が死ぬなんて、と思いますか？

女性　…どういうことですか？

探偵　私自身も死因を聞いたときは、半信半疑でしたが、
　　　あなたのお話を伺っていて、確信を得ました。
　　　そう、○○さんを殺した犯人は…あなたです！